失楽園 7


(7)
「ああ。……アキラくんは、こういう油っこいものをあまり食べたがらないからな。食の細い子だし」
緒方は無表情にテーブルに肘をついてコーヒーを呷る。
「――ねぇ、先生。塔矢とのことを聞いていい?」
破れた紙に包まれたハンバーガーを口元まで持って行った緒方は、控えめなヒカルの申し出を受け
容れた。
「内容にもよるがな」
吐き捨てるように呟いて一口齧ると、『フン、食えないほどではないな』と続けた。
「先生はやっぱり、塔矢と……?」
2人の間を流れている親密な空気を、緒方は隠そうとはしていない。寧ろそれをヒカルに知らしめ、
ヒカルの反応を見て楽しんでいるような気すらしていた。
……だから、核心に触れて訊いてもいい。ヒカルはそう判断した。
「――ああ、寝てるよ」
何ともないことのように告げられ、コーラが入った紙コップを掴む手に力が入る。
アキラとの一夜を思い出すだけで、ヒカルの胸はざわついた。アキラに胸を舐められ、下着の中の
ものを握りしめられ、挙げ句の果てには自分でも触ったことのないような場所を暴かれた。気にし
ないでいられる方が嘘だ。
しかし、インモラルなことであるのが判る以上、口外するのは憚られる。ヒカルが逆に緒方に問われた
としても、緒方のようにあっさりとそのことを認められそうにはなかった。
「アイツのこと、好きなの?」
「好き?」



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