初めての体験+Aside 7


(7)
 「おーい、来たぞー。」
ヒカルが、家の中に向かって声をかけた。と、同時に扉が外れんばかりの勢いで引き戸が開いた。
ガシャン!
大きな音がして、填めてある硝子が割れたのかと思った。社はとっさにヒカルをかばうように
前に出た。
 ヒカルはポカンと社を見上げていたが、すぐに破顔した。
天使みたいや…。
その笑顔に社は暫く見とれていた。ここに、天敵アキラがいることなど頭の中からすっかり
消え去ってしまったくらいに…。
「大丈夫だよ。ありがと、社。」
ヒカルは先に立って、社を招いた。

 家の中に入ると、社はホッと息を吐いた。大阪からここまでノンストップ、しかも
散々歩いてようやく宿に到着したのだ。先程までの緊張が解けたこともあって、
「やっと、着いた…」
と、つい言ってしまった。
 ヒカル達を招き入れていたアキラが、耳ざとくそれを聞き咎めた。
「やっと?(太字)」
アキラの目が鋭く光った。ヒカルは手にしていた地図を握りつぶし、慌てて家の中に
逃げ込もうとしたが、アキラに襟首を掴まれてそれは叶わなかった。
―――――しもた!?進藤のピンチや!
もし、ここに来る途中に何があったかバレたらどうなることか…!?自分が虐められるのは
ガマンできるが、ヒカルが責められるのは堪らない。
「ちょ、ちょっと、迷うてしもて……」
苦しい言い訳だ。何度もここに来ているヒカルが、迷う訳なんてない…。
もぉちょい、エエ理由が思いつかんのか?オレは…
情けなくて涙が出そうだ。



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