魔境初?トーマスが報われている小説(タイトル無し) 7


(7)
ふたりでベッドに寝転んだ後も、和谷はしばらくの間は大人しかった。
大人しかったといっても舌は俺の口の中やら耳の中やら首筋やら這いまわっていて、
もしかして和谷に食べられるんじゃないかと思ってしまったほどだけど。
……あ、こういうのも「食べられる」って言うのか。
自分の発想に真っ赤になってしまったのを和谷に気づかれなかったのには、ホッとした。
和谷はまだ自分の位置取りを決めかねているみたいだった。
俺に押しつぶしてしまわないように気を遣ってくれているらしい。
それは嬉しいんだけど、ベッドの中で和谷の身体が動くときに俺の太腿のあたりに硬いものが当たるのがたまらなかった。
初めは和谷の足かな? って思ってたけど、それってアレだよな。きっと。
和谷が俺の骨と皮ばっかりの貧弱な身体でも欲情してくれるってのは、けっこう凄いことだと思うけど。
だけど、怖いんだよ。本当にそんな硬いものを、俺の身体に挿れるのかって。

「ひっ……!」
思わず出した声は、裏返って甲高くて、なんだか媚びてるみたいで。
必死に抑えようとしたけど、止められない。
皺の寄っているシーツを噛んで声を殺そうとしても、和谷がそれを許してくれない。
「進藤の声、すっげぇイイ」
おまけに耳元でそんなことまで囁かれる。普段は凄くいいヤツなのに、こんなときは意地悪だ。
聞きたくないって意味を込めて頭を振っても、和谷の声は追いかけてくる。



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