月明星稀 7


(7)
水音が聞こえる。
早朝の張り詰めた空気の中で、アキラが禊の水を浴びているのだ。

戸の隙間から朝の光が室内に射し込んでいる。
あの時よりも、今朝はもう随分明るい。
天井を見上げたまま、ヒカルはここで過ごした日々の、最後の夜と、その朝との事を反芻した。
ではあの言葉は夢ではなかったのか。
ではあれは自分の事だったのか。
夕べの彼の言葉は今度こそ夢ではなく現実にあったことで。
かつて聞いた、自分が夢と思いこんだ言葉もやはり現実だったのだと、やっと悟る。
とんでもない大馬鹿者だと、よっぽど鈍感な奴だと思った、それは自分の事であったのか。
成る程、とてつもなく鈍感な大馬鹿者だ。
なぜ気付きもしなかったのだろう。
それでは自分はあの言葉を、望んでいたのか、望まなかったのか。わからない。わからなくなる。
その時は確かに嬉しかった。嬉しいと感じた。それなのになぜ、夢だと思い込んでしまったのだろう。
それではまるで、嬉しいと思いながらも彼の思いを拒絶したようなものではないか?

けれど水音に呼ばれたようにヒカルは起き上がり、戸を開けて庭に降り立ち、あの日の朝のように
井戸に向かった。



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