Linkage 7 - 8
(7)
テレビのニュース番組をさしたる興味もなさそうな様子で見ていたアキラ
だったが、話題が中国の話に変わると箸を持つ手がぴくっと震えた。
ちょうどそこへ、シャワーを浴びてきた緒方がバスローブを身に纏い、
タオルで濡れた髪を拭きながら現れた。
アキラがまだ途中だった食事を片付けようとすると、それを遮るように
ひらひらと軽く手を振る。
「そう急がないでいい。まる一日何も食ってなかったんだろ、アキラ君。
まあゆっくり食べるんだな」
そう言うと緒方はテーブルに置かれたエビアンのボトルを手に取り、
一口飲んでからテレビに映し出された北京の映像をチラリと見た。
「そういえば先生は大丈夫なのか?お母さんも向こうに行ってるんだろう?」
思い出したようにアキラに尋ねる緒方を見つめながら、アキラは答える。
「ええ、体調はもういいみたいですよ。でも、心配だから当分は母も向こうで
一緒にいるつもりのようですけど」
アキラの父親、塔矢行洋は北京に渡った後、再び心筋梗塞で倒れ入院していた。
夫の体調を気遣って、アキラの母親も十日ほど前に北京へ旅立ち、塔矢家には
息子であるアキラが一人残ることになった。
だが、そのアキラは一週間前から緒方の住むこのマンションで生活している。
「それなら安心だな。先生おひとりで海外だなんてオレも心配だったんでね。
それに……」
緒方は皮肉っぽく笑うと、アキラのうなじを指で撫で上げながら言った。
「アキラ君ともこうして毎晩ゆっくり楽しめるわけだからな。フフフ」
(8)
「…あっ……おが…たさん……や………んっ!」
くっきりと浮き出したアキラの鎖骨をなぞるように緒方の舌が這うと、
アキラは堪らず身を捩った。
自然と跳ね上がるアキラの身体を軽く体重をかけて押さえ込みながら、
緒方は何事もなかったかのように愛撫を続行する。
緒方とこれまでに何度肌を重ねたか、アキラはもう覚えていない。
この部屋で、このベッドの上で、幾度となく緒方に愛撫され、その肉体を
受け入れてきた。
互いの肉体を繋いでいるのが愛情でないことは、アキラも十分承知している。
「さすがはアキラ君だ、よくわかっているじゃないか。いつもと違って、
こういうのも楽しいだろ?」
緒方のマンションで暮らすようになって一週間になるが、何故か緒方は
毎晩同じコースを辿ってアキラに前戯を施していた。
緒方がワンパターンのセックスしかできないような男でないことは、
アキラも十二分に承知している。
最初は緒方の意図が掴めなかったアキラだが、今は他でもないアキラの
肉体がその意図を察知し、意志に反して素直に反応してしまう。
「いい子だね、アキラ君」
そう言うと緒方は指と唇でアキラの肉体に刻み込まれた昨夜までの情交の
証を丹念に辿って行った。
薄桃色に染まったアキラの乳首を爪先で挟み、軽く引っ掻くと、緒方の髪の
中に差し入れられたアキラの手がぐっとその髪を掴む。
アキラの下半身は既に十分すぎるほどに熱くなり、先端を透明な液体で
濡らしながら雄々しくその存在を主張しているのに、緒方はまるで見向きも
しない。
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