四十八手・その後 7 - 8


(7)
「あー、跡がいっぱいついちゃってるよ(///)」
 塔矢と初めて二人で過ごした夜。まだ馴れないから途中いろいろあっ
たけど、やっぱり、この前と違ってたなー。
 終わって、俺と入れ違いに塔矢が風呂に入ってる間に、こっそり調べ
てみたら、今日のメニューは『だるま返し』と『帆かけ茶臼』ってやつ
だった。やっぱり研究熱心だなー、塔矢は。
『ヒカル、何を感心してるんです?』
 火照りを冷ましてる俺の横で、ふぅーとため息をついてる佐為。
『あはは、ごめん、ごめん』
『もう、私のことなんてすっかり忘れて!』
 だってさ、今日は佐為のことを考えてる余裕なんてなかったもんな。
この前と違って、塔矢は優しかったし。
『これって、佐為の言ってた「怪しの恋」なのかなー』
『ヒカルが真剣なら、私は止めはしませんけど』
『まだ早いとか、佐為は思わないの?』
 男同士がっていうのは珍しくないって、言ってたけどさ。俺たちまだ
中学生だもんな。
『千年前なら、ヒカルも塔矢も元服の加冠も済んだりっぱな大人ですよ』
『そっか』
 じゃあ、いいのかな。俺と塔矢がこんなことをしちゃってもさ。そう
訊ねると、佐為は少し寂しそうな顔で、言った。
『塔矢は、きっと、ヒカルを支えてくれるでしょうから』
 支え?って訊き返しても、佐為はただ微笑んだままだった。


(8)
「進藤、起きてる?」
「起きてるよー」
 まだ髪が濡れたままの塔矢は、見慣れたおかっぱ頭が普通のショート
カットみたいに見えて、何だか新鮮な感じだった。
「ちょっと早いけど、もう寝ようか?」
「うん」
 三回もしちっゃて、ちょっと疲れた感じだもんな。腰もだるーい。
「今日はもう何もしないから、こうやって眠ってもいい?」
「いいよ」
 ごそごそと収まりのいい場所を探すのにまた揉めたりして、まだまだ
馴れてないな、俺も塔矢も(笑) でも、何だか塔矢の腕の中はふわふわ
してて気持ちいいや。
「なぁ、塔矢」
「ん、何?」
「俺もパソコンを買おうかな」
 プロになって、対局料とか記録係の仕事をやれば、ちょっとずつでも
資金が貯まるよな。
「どうしたの、急に」
「塔矢のを見てから、欲しくなった」
「そう、あると、便利だけどね。棋譜の整理もできるし」
「うん、便利そうだよな。調べものとかにさー(笑)」
 ちらっと上目遣いに見たら、複雑そうな表情の塔矢。
 えへへ、たまには俺が塔矢をびっくりさせてやるのもいい気分だな。


End



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