灑涙雨 (さいるいう) 7 - 8


(7)

誰よりも熱い、けれど誰よりも厳しく己を律する彼が、その枷を外して情熱のままに自分を求めてくれる
時、全身が震えるほどの喜びを感じる。
折り重なった身体の間で、彼が既に熱く昂ぶっていることを感じる。その熱をもっと感じたくて、同じよう
に昂ぶっている自分自身を擦り付けるように腰を動かす。一瞬、逃げるように動いた肩を掴んで押しと
どめ、非難するように齧り付くと、彼の口から鋭い息が漏れた。
お返しのように彼が身体の重みごと、彼自身を押し付けてくる。熱く火照る二つの身体の間でさらに熱い
熱が擦られあって粘液質の音をたてる。脳髄を焼くような快感に耐えられずに身体を捩じらせ胸を逸ら
せて熱い吐息を漏らした。

目の前に見せ付けるように押し出された淡紅色の飾りに、アキラは請われるままに舌を這わせる。刺激
を受けて明瞭な形を成してきた突起を舌で舐り、口に含み、軽く歯を立てると、ヒカルの身体がまたびくん
と仰け反る。腕を背に回しいれ、抱きすくめるようにしながらもう片方の胸にも同じような愛撫を与えてやる
と、もはや彼はすすり泣くような喘ぎを漏らさずにはいられない。
彼の下肢を割り開き、内腿を撫で擦りながら尚も執拗に胸部への愛撫を続けると、彼は抗議するように
頭を振り、彼自身をこちらの腹に擦り付けるように動く。そんな彼に小さく笑って、軽い音を立てて小さな
突起を解放してやり、そのまま間髪入れずに頭を下げ、熱い涙を溢している彼自身を口に含んだ。
頭上で制止する声が響き頭を引き離そうとする手を感じるけれど、構わずに熱く猛る彼自身を口内で弄
る。抗議の声が鳴き声に変わったのを見計らって強く吸い上げてやると、そのまま彼は口の中で弾けた。


(8)
裸の胸を上下させ、荒い息をついている彼の、額にかかる前髪をそっと払い、優しくくちづけを落とすと、
彼の腕が伸び、ぎゅっと抱きしめられた。汗に濡れた熱い身体と激しく脈打つ鼓動が愛おしい。
そのまま唇を重ね、軽く触れ合わせては離し、また触れ、舌先で彼の形よい唇の輪郭をなぞる。そんな
事を繰り返していると、いつの間にか下半身に降りていた彼の手に自身をぐっと握りこまれた。
「…アキラ、もう、」
熱く濡れた瞳が懇願するように見上げている。その瞳の色に心臓が跳ね上がる。彼の手に包まれた自分
自身が更に張り詰め、硬度を増したのを感じる。それでもまだ焦らすように、彼の手の上から自身と彼自
身を添えるように握りこんで腰を揺らす。
「ああ…ッ!」
身を捩らせる彼の片足を空いた手で掴んで大きく脚を開かせ、早く来て欲しいと待ち望んでいるそこに
自分自身を一気に捩じ込んだ。悲鳴のような鳴き声と同時に彼の背が大きくしなる。その背をそのまま
ぐっと抱き寄せると、首に回された彼の腕に、それ以上の力でしがみ付かれた。
自分のものなのか、彼のものなのかもわからない熱い脈動を全身で感じる。滴り落ちる汗が混じりあう。
荒い息遣いと、汗が飛び散る音と、身体と身体がぶつかり合う音が響く。もはや二頭の獣のように、彼ら
は絡まりあいながら互いに互いを感じ取り、受け止め、更に貪欲に貪りつくす事に没頭していった。



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