失着点 7 - 8


(7)
ヒカルは半ば強引にベッドに押さえ付けるようにしてアキラの唇を貪った。
あまりの勢いに歯がぶつかり合い、それでもかまわず舌をからませる。
アキラの舌を吸い、噛み付き、息を継がせず唇を覆う。
ヒカルのだ液がアキラの口の中に流れ込みアキラはそれを飲んだ。
二人の間にあるものが何もかも煩わしくてヒカルはアキラのTシャツを
剥ぐようにして脱がせ、自分もパーカーとシャツを脱ぎ捨てた。
しばらくの間素肌で抱き合い互いの高い体熱と激しい心音を重ね合わせる。
やがてヒカルは荒い呼吸で体を起こすと、アキラのズボンに手をかけた。
「…!」
アキラが制するより先に一気にブリーフごと引き降ろす。
和室の明かりを受けて露になったアキラ自身をヒカルは見つめた。
アキラは両腕で顔を覆うようにしてヒカルの視線の下に横たわっていた。
きれいだな、とヒカルは思った。
余分なものが一切ついていない痩体にそれなりに筋肉が薄く張り付いている。
その部分は、自分と同じ位の大きさかな、と思った。それはゆずれない。
僅かに色付き覆っているものから剥き出た果肉がピクリと小さく震えている。
同性とは言え、いや、同性だからこそ他人の裸をこんなにまじまじと
見た事はなかった。女の裸の写真はいくらでもそこらに溢れている。
憑かれたように見入っていると、アキラがたまらず上半身を起こし
ヒカルのズボンのベルトに手をかけてきた。
「あ、ち、ちょっと、待った!」
思わずアキラの両手首を掴んで再度ベッドに押さえつける。
ムシが良すぎるようだが自分の方はまだ心の準備が出来ていない。
アキラは露骨にぶ然とした表情になってヒカルを睨み付けて来た。


(8)
アキラはヒカルの手を振りほどくとベッドから下りていってしまった。
「あちゃー…、」
ヒカルは頭を抱え込んだ。こんどこそ完全にアキラを怒らせてしまったと
思ったからだ。もうアキラはここには戻って来ないのだと。
するとフッと室内が暗くなった。
台所と隣の和室の電気が消えたのだ。
それでも窓の外から漏れて来る明かりで真っ暗ではなかったが。
「…これでいいだろう。」
白く浮かび上がった裸身のアキラが戻って来た。
ヒカルはもう何も言えなかった。ベッドから下りてアキラの前に立つ。
アキラはヒカルのベルトを外し、ズボンのファスナーを下ろし、脱がす。
そしてヒカルの首に腕をまわすとベッドの上に倒した。
ヒカルの顔に覆いかぶさるようにして額、鼻筋、頬と優しいキスを重ねる。
ヒカルはアキラの好きにさせようと思った。
何よりアキラの温かい吐息とのしかかる重さが心地よかった。
下腹部で触れあうものが熱かった。
耳たぶ、首筋と儀式のようなアキラのキスの洗礼は続いた。
「ん…んんっ…!」
洗礼が右の乳首に届いた時、ヒカルは初めて声を漏らした。
乳首がこんなに敏感だなんて知らなかった。
あるかないか分からない程だった胸の突起はアキラの唇の中で膨らみ、
くっきりと輪郭を現して堪え難い程の快感をヒカルに与え始めた。



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