天涯硝子 7 - 8
(7)
冴木は体をつなげたままヒカルを横向きに寝かせ、ヒカルの片足を抱くようにして持ち上げ、もう片方の足を股下にくぐらせた。
そして、自分の両足でヒカルの腹を挟むようにすると、ヒカルの中をゆっくり行き来し始める。
指をもぐり込ませていた時とは違い、ヒカルの中は狭くきつい。
ヒカルのその入り口は粘液と精液とで濡れてはいるが、冴木の行為を容易にはしてくれなかった。
ヒカルの足の間に腰を着け、最奥まで達するように何度も自分の昂ぶりを落とし込む。
その昂ぶりは、ヒカルの内側の侵入を拒もうとする動きに擦りあげられた。
そうかと思うと、ねじ込んだ腰を引くと反対に吸いつくようにまとわりついてくる。
冴木はその感覚を楽しむように、じっくりとヒカルを責め立てた。
ヒカルの中が次第に濡れそぼってくると、冴木は待っていたとばかりに動きを早め、片手をヒカルのモノに添えて擦り上げる。
「…あ、はぁ…く……ん…」
切なげな声を漏らしていたヒカルの口からは、小さな悲鳴のような声があがり始めた。
呼吸が短く吐くようになり、ついには息をつめ、足を引きつらせて冴木の手の中に今日何度目かの精を放った。
冴木のモノを飲み込んだヒカルの下の口では、ぬちぬちと音が大きく立ち始め、
果てなど知らぬかのように冴木はヒカルを責め続ける。
無意識の内に体の下から逃げ出そうとするヒカルの肩を、冴木は乱暴に掴み、
座りやすく、やや角度のついた座席に落ち込ませるように押さえつけた。
そうしてリズムをつけて腰を打ちつけて来るかと思えば、不規則に抜き差しされ、
ヒカルは呼吸のタイミングを乱されていた。
腹の中に抜き差ししてくる冴木のモノは、最早、ヒカルを苦しめるだけだった。
大きく体を震わせて冴木が呻いた。
啜り泣くヒカルの中を断続的に冴木の精が濡らしていく。じわりと熱いものが自分の中に広がって行くのをヒカルは感じていた。
「……」
息を乱しながら冴木はヒカルの体から一度離れ、再び体重をかけて覆い被さってきた。
ヒカルの零した涙を舐め取ると、噛みつくように乱暴な口付けをしてくる。
荒々しい貪るような口付けを終え、冴木はヒカルの頬に口付け、あごを甘噛みし、首筋を舐めた。
ヒカルは冴木を抱こうと腕を動かしたが、その動きも冴木に封じられしまった。
冴木は首筋を甘く噛んだあと、鎖骨を噛み、ヒカルの薄い胸に辿り着き、
興奮して硬くなった小さな乳首を、舌で押しつぶすようにして舐めた。
面白いようにヒカルの体が反応する。
「…ぅんっ、……」
面白いようにヒカルの身体が反応する。
唇ではさみ、舌先で転がし歯をこすりつける。
暗闇で見えはしないが、ヒカルの乳首は充血しているだろう。
冴木はしばらくヒカルの胸の上で遊び、今度は少しづつ腹へと身体をずらしていった。
(8)
脇腹を、尖らせた舌先で強く押されるようにして舐められる。
反応すまいと思っても身体はピクンと跳ねた。
胸に這ってきた冴木の手が、小さな突起を見つけ、かすめるように弄び始める。
何だかまた下腹が疼いてきそうだ。
やさしく扱われ、うっとりとした気分でいたヒカルは、次の瞬間、息を飲んだ。
臍の辺りを舐めていた冴木が急に歯を立てて、噛みついて来たからだ。
「!!…痛ぁ!…冴木さん!」
獣が捕らえた獲物のはらわたを、まずは喰らおうとするように冴木はきつく噛みついた。
きりきりと腹の薄い肉に歯を立て、食い千切ろうとせんばかりだ。
「痛い!…つぅ…」
ヒカルは身体をこわばらせ、冴木の頭を引き離そうと手を掛けると、今度はその手の甲を噛まれた。
「冴木さん!」
ヒカルのかすれた声に冴木は少し間をおいてから、驚いて萎えてしまったヒカル自身を口に含んだ。
「……」
冴木の舌が包むように、ゆっくりと動く。
下腹は再び熱くなるのに、背筋は冷たくなった。
−−また、噛みつかれるかもしれない。
身体をずり上げ、両手をさ迷わせる。何かに捕まって冴木から逃げ出したかった。
何かを掴もうと延ばした手だったが、頭の上には閉ざされたかたいドアがあり、ヒカルは腕を打ちつけた。
座席の背もたれもヒカル達を囲う、高く冷たい壁のようだ。
寝かされているシートは少し身体をずらすと肩が落ち、そのまま頭も落ちそうになる。
ヒカルは目を開けてみた。何も見えないと思っていたのに、何か薄青いものが目の隅に映った。
しかし、それ以外はやはり何も見えない。何も無いようにさえ思える。
自分に触れている冴木の身体だけが、今の自分を救うもののように感じた。
もう何をされてもいいから、自分を抱いていて欲しいと思った。
噛まれるのではないかと心細かったが、冴木はずっとやさしくヒカルを扱っていた。
しばらくすると、ヒカルのモノを音を立てて舐めていた冴木がすっとヒカルから離れた。
離れたふたりの身体のすき間に冷えた空気が流れこんで、一瞬ヒカルはヒヤリとする。
…途中で放り出されて苦しい。
足に冴木が触れたかと思うと、腰を掴まれ乱暴にうつぶせにされると、片足が床に落ちてしまった。
ヒカルが足を延ばして腰を上げると、冴木の手が双丘をつかみ、親指でその入り口を押し広げた。
間髪入れずに冴木の熱い塊が押しつけられ、そのままグイッと刺し貫かれた。
「ああっ!!」
ヒカルの中に残っていた精液と入り口を濡らす唾液に助けられ、冴木は今まで以上に楽にヒカルの中を行き来できた。
前後に揺さぶられ、座席に顔をこすりつけてヒカルが呻く。
冴木が身体を折るようにして、自分の腹をヒカルの腰の上に乗せて来た。
手をヒカルの股間に延ばし、唾液に濡れたヒカル自身を掴むと激しくこすり上げた。
それはヒカルの中を打ちつけるリズムとは、また別のものだった。
ヒカルを前後に揺さぶると車体も揺れるのか、反動で返るヒカルの腰は、
冴木のモノで打ち砕かれるのではないかと思うほど、深く抉られた。
ヒカルが何事かを言う。しかし冴木は聞き取れなかった。
「…まだだ。…進藤…まだ…」
そうつぶやく冴木の声も、ヒカルに届いているのかわからない。
「…はぁっ、…はぁ…はぁっ…」
荒々しい息遣いに言葉はかすれて消えてしまう。
崩れるようにヒカルは打ち臥し、続いて冴木もヒカルの上に倒れこんだ。
水面を打つようなピシャピシャという音が消え、ヒカルの指がカリカリとドアを引っ掻く音が小さく響いた
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