失着点・龍界編 70 - 71
(70)
「ボクを…嫌いにならないで…嫌いにならないで!…進藤…」
激しくしゃくりあげ、声をあげてアキラは泣き続けた。
「何言ってンだよ」
ヒカルはアキラの背中をあやすようにさする。
「塔矢を嫌いになるわけないだろう。…嫌いになれるわけないじゃないか」
ヒカルはアキラの涙で濡れた頬を両手で持ち、自分と目を合わさせる。
額と頬にキスをする。アキラの額に自分の額をくっつける。
「…本当に…?」
少しだけアキラは落ち着きを取り戻し始めた。頭に巻かれた包帯が痛々しい。
「ほら、大人しく寝ないと、傷が開いちゃうよ。オレがついていてやるから」
ヒカルはアキラを寝かし付けるように胸を撫でた。
「…進藤…」
「何?」
「…来て…」
「…!」
ヒカルは一瞬、戸惑うようにアキラを見た。
「…でも…塔矢…」
アキラは真直ぐにヒカルを見つめて来る。その両目から止めどなく涙が溢れて
頬を流れ落ちて行く。ヒカルが指で拭っても拭っても追い付かなかった。
するとアキラの方からヒカルに覆い被さって来て、ヒカルの腫れ上がった
顔半分や痣が出来ている箇所にキスをし始めた。体を震わせながらヒカルの
両手首の包帯の上にもキスをし、切れた唇の端を一心に舐める。ヒカルの傷を
少しでも癒そうとするように。アキラの温かい舌がたまらなく愛しかった。
急激にヒカルの体芯が熱く高まり脈打った。
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手負いの体でヒカルを受け入れる事はかなりの苦痛を伴うはずだ。それでも
アキラはそれを望んでいる。ヒカルはアキラを体の下に組み敷いた。
「オレだけだよな…?」
「え…?」
「お前が弱いところを見せるのは、オレだけだよな…」
パアッと、アキラの顔が赤らんだ気がした。アキラは目を反らして指を口元に
運び爪を噛む。無意識にしているようで、本人は気付いていないが困ったり
戸惑った時のアキラの癖だ。
「…そうだよ…進藤の前だけだよ…」
悔しそうに答える。そういうところがアキラは妙に子供っぽい。
ヒカルは指先をそっと下着の中のアキラの足の間に入れてその部分に触れた。
「あ…!」
ビクリとアキラは体を震わせた。ヒカルは指先を動かして様子を探った。
そこは相当な熱を持ち、膨れ上がっているように思えた。ただそれは、狼藉を
受けた後遺症のせいだけではなさそうだった。
ヒカルが来るのを待っている。ヒカルの腕に触れる、その箇所の手前で
同じように熱を持ってそそり立ち雫を溢れさせているアキラ自身が
それを伝えていた。
あの男の指の感触を消し去りたい。ヒカルを見つめるアキラの目はそう
訴えていた。ヒカルは残りの衣服を脱ぎさりアキラのも取り払った。
直に肌に触れもう一度抱き締めあう。
「…もう止められないからな…」
ヒカルは自分自身をそこにあてがい、アキラの肩を押さえると
ゆっくりとアキラの中に埋めて行った。
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