失着点・展界編 72


(72)
盤上から石が落ちた。対局者達が驚いて一斉に和谷とアキラを見る。
棋院の手合いの立会人が駆け付ける。
「わ、和谷君…!?何だね、その態度は…」
そう言いかけてアキラに制するように睨まれ、口籠り、引き下がって行った。
…ありません、とわずかに和谷の口が動いた。
アキラは眉一つ動かさずそれらを見届けると無表情に小さく一礼し、碁石を
片付ける。
まだ傷跡や腫れが残り色が変わっている和谷の右手とは対照的に盤上を動く
しなやかで白く美しいアキラの手は、何ものも寄せつけない高貴さを
持っていた。和谷には絶対得られないものを、その手が得るのだ。
ヒカルも伊角も二人の終局を感じ取り、ヒカルも自分の方を急いだ。
相手はアキラ達の様子に気をとられていた事もあり、間もなく中押しした。
伊角はヒカルとは違ってあくまでマイペースで打ち続けていた。
「和谷…後は…お前次第だ…」
そう小さく呟いた。
アキラは結果表に書き込みをすると、まだ座り込んでいた和谷に声を掛ける。
「聞きたい事があるんだけど…いいかな。」
和谷もそれを予測していたようだった。ヒカルは石をしまいながら、二人が
出て行くのを見て、結果を書き込み、後を追った。
廊下に出て、二人の行方を探す。普段人があまり来ない奥まった方の階段の
踊り場に、彼等はいた。
「…進藤に、何をした。」
アキラが感情を押さえた声で和谷に問いていた。



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