失着点・龍界編 72 - 73
(72)
「くう…っ!」
アキラの体が反り上がり咽の奥で悲鳴が出そうなのを飲み込むのが分かった。
「声を出せよ、塔矢…」
鼓動の度に全身の傷が痛む中でヒカルも激しく興奮していた。
久しぶりのアキラの中は、とろけそうに熱く何ものにも替え難い感触で
ヒカル自身を包み込んで来る。
「…オレの前では我慢するなよ、塔矢…!」
根元まで押し入り、ヒカルも熱い吐息を漏らす。数カ月振りのアキラの
―それ以前も、決して多くはなかったアキラに入る機会を味わう。
「…あっ…進藤…進藤…!」
苦痛なのか喘ぎなのか分からない声でアキラがヒカルを呼び続ける。
互いに少しづつ体を動かしあって、快楽を求めると言うより、体の一番
深い場所で相手の存在を確かめ結びつきの強さを確認しあう。
以前にも感じた、肉体を超えて解け合う感触を体に刻み込む。
包帯がほどけてアキラの顔にかかり、白い包帯と黒髪が入り乱れ、その中で
喘ぐアキラの表情はひどく魅惑的に見えた。
苦痛に歪む表情も快感に漏れる吐息混じりの声も滲み出る汗も、
全てオレのものだ。そしてオレの全てがアキラのものなのだ。
現にこうして、アキラを責めながらもヒカル自身がアキラに飲み込まれ
吸い尽くされようとしていた。
「はあっ…あ…、塔矢…!」
全ての思いが一気にヒカルの体の奥を駆け抜けてアキラの中に
注ぎ込まれていく。二人は何度も解け合い一つになった。
自分達は一体なのだ。今までも、そしてこれからも。
頭から尾の先までを絡ませあう二匹の龍のように―。
(73)
次の日の午後、緒方が迎えにマンションに来た時、すでに二人は
出られる用意をしていた。
目に力を取り戻し静かにソファに座るアキラを見て緒方は安堵し、感謝する
ようにヒカルを見た。ヒカルも緒方にハッキリと答えた。
「オレ達は、大丈夫です。」
そしてヒカルは何とかほどけたアキラの頭の包帯を巻きなおそうと
四苦八苦していた。
「包帯はいいよ、進藤。絆創膏で。」
アキラがすまなそうにヒカルを見るがヒカルは半分意地になっている
ようだった。そしてヒカルは助けを求めるような目で緒方を見た。
「…オレにどうしろと言うんだ。」
緒方は包帯でぐるぐる巻の右手を見せた。
するとアキラはその手に引き寄せられるように立上がり、緒方のそばに
歩み寄った。包帯が巻かれた手を取りそっと撫でる。涙が一筋こぼれ落ちた。
「…君が泣く事はないんだ。アキラ君」
緒方はアキラの涙を左手の指先で拭った。
それを見ていたヒカルは、ふと、ゆうべのアキラの言葉を思い出していた。
『…ボクも来た事があるよ…一度だけ…』
あれは、アキラなりの告白だったのかもしれない。
目の前の二人を見ているとそう思えてきた。
でも、以前二人に何かあったとしても、今の自分には関係なかった。
もし緒方とアキラにそう言う関係が一度でもあって、その上で緒方がアキラを
手放しアキラが緒方のもとを去ったのなら、それは余程の決意があった上での
事なのだろう。二人の中で完結しているものなのだ。
自分と緒方の関係がそうであったように。
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