誘惑 第三部 73


(73)
「ヒカルー!?お夕飯、どうするの?塔矢くん、食べてくわよね?」
いきなり階下から大きな声をかけられて、今にも互いの服を剥ぎ始めようかとしていた二人の体
が硬直する。
「……だからっ!」
真っ赤な顔をさせたままアキラはヒカルの身体を引き剥がし、音だけは小さく潜めた声でヒカル
を咎めた。
「すぐそこにキミのお母さんがいるって言うのに、誘惑するな!」
「ゆっ…ユーワクって、」
同じくらい顔を赤くさせたヒカルが言い返す。
「してねぇ!違うだろ、ユーワクしたのはおまえの方じゃねぇか!!」
「してない!キスしてきたのはキミの方じゃないか!」
「したよ!あんな真っ赤な顔して睨んできて、」
「なっ!そ、それのどこが誘惑してる事になるんだ。」
「してるよ。あんなカワイイ顔されて、平気なわけ、ねェだろ!」
「かっ、可愛い?キミは人をからかうのもいい加減に…」
言い合っている間に次第に声が大きくなる。
「ヒカル?聞こえてるの?ねぇ、」
そこへもう一度ヒカルの母の声が響いて、二人はぴたっと言いやめる。
階段をとんとんと上がってくる音がして、ヒカルは慌てて大声を出した。
「うわっ、聞こえてる聞こえてる。うん、だいじょぶ。食べてくって。そ、それより、そう、今は検討し
てるから、ジャマしないで。」
「はいはい、わかりました。じゃあ、どうぞごゆっくり。」
と、返事が聞こえ、途中まで階段を昇りかけた母がまた降りていく気配を感じて、ヒカルはほっと
胸を撫で下ろした。同時に、息を詰めていたアキラがふうっと息を吐き出す。
ちらっと窺うように相手を見ると目が合ってしまって、二人は慌てて目を逸らせた。



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