誘惑 第三部 74
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「け、検討、しようか。」
「うん、そうだな。」
髪を撫でつけ、多少乱れた服を調えながら碁盤の前に座る。
「さっきの、ここの局面だけど、」
コホンと咳払いしてから、アキラが僅かに赤みの残る頬を誤魔化すように石を並べ始める。
「進藤?大丈夫か?」
まだ頭を切り替えられずにぼうっとしていたヒカルが慌てて顔を上げてアキラを見上げ、それから
盤面に目をやる。その様子にアキラがクスクス笑いながら言った。
「頼むから、さっきみたいに検討の最中になんか誘惑しないでくれよ?」
からかうような口調にヒカルがムッとしてアキラを見上げて、ヒカルはまた言葉を失ってしまった。
だから!そうやってキレイに笑うんじゃねェよ!誘惑してるのはどっちなんだよ、バカ!!
おわり
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