失着点・展界編 75


(75)
その時、棋院の事務の人が、アキラの姿を見つけて呼びに来た。
「アキラくん、会報に載せる文章の事で、外で少し打ち合わせできるかい?」
アキラはハッとなった。
「今はちょっと…」
そう言いかけたのをヒカルが遮った。
「行ってこいよ、仕事だろ。大丈夫だよ、伊角さんもいるし…。夜行くから、
…待ってて…。」
アキラはもう一度和谷の方を見た。和谷の側にいる伊角という人を、ヒカルも
信用しているのならば、と納得したようだった。
ヒカルはアキラと別れて和谷のところに戻った。だが和谷はヒカルの方を
見ようとしない。完璧なまでにアキラに叩きのめされ、心を閉じてしまって
いるかに思えた。すると、フッと和谷の口元が弛んだ。
「完璧なオレの負けだ…!!、あーあ、」
と両手を突き上げ背伸びをした。そんな和谷にヒカルは少しホッとした。
「あんな気迫のこもった一手一手、初めてだ。お前らに見せてやりたいよ。」
伊角が和谷の背中をポンポンと叩く。そして二人で歩き出しかけて、伊角が
ヒカルに振り返った。
「進藤、…もう少し、和谷につき合ってやれ。」
「え…?」
「検討会をしよう。それでお終いだ。…大丈夫、オレも一緒だから。」
「検討会…?どこで…?」
会場から出て来る対局者達は、和谷を見てボソボソ何か話している。
棋院会館内はやめた方が良さそうだった。



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