平安幻想異聞録-異聞- 76


(76)
既に日は傾き、雲が金色に染まりかけている。
アキラの家を出たヒカルは、徒歩で座間の屋敷へと向かった。
並の貴族では手に入れることのできない見事な書院造りの屋敷。
大きな門の前に行き、使用人らしき男を呼び、用件を告げる。
「座間様はただいま、内裏の方に出仕しておいでで、夜までお帰りになりません」
検非違使風情がたったひとりで、天下の座間様になんの用かと男が眉をひそめる。
だが、ヒカルが自分の名を告げると、思い当たったように頷き、
「座間様から聞き及んでおります。近衛様がいらしたら、中にお通しして
 おくようにと」
と、あっさり中に入れてくれた。
やはり、座間はこうしてヒカルがここを訪れることなど予想の内だったのだ。

通された客間で、ヒカルはじっと座って座間の帰りをまった。
半刻ほども、壁を睨みつけるようにしてそうして座っていただろうか?
屋敷の門のほうがにわかに慌ただしくなり、部屋の御簾が侍女の手によって上げられ、
座間が入ってきた。後ろに菅原も付き従っている。
「これはこれは検非違使殿、よう来られた。しかし儂は、そなたに嫌われているかと
 思っておったが、どういう風の吹き回しかのう」
「そんなの……お前が一番よく知ってるだろ!」
ヒカルは思わず声を荒げていた。ヒカルの前に腰を下ろしながら、座間が口の端を上げて笑う。
「はてさて、検非違使殿は何を言っておられるのか? わかるか、顕忠?」
「いや、私めにはさっぱりです」
座間の後ろに立つ菅原が相づちを打った。
「ふざけんなよ、あれをオレにけしかけたのは、お前らだろ!」
「ほう、いつになったらと思って楽しみにしておったが、ついにあれが行ったかの」
脇息に体重をあずけながら、あっさりと言う座間に、ヒカルが唇を噛んだ。



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