失着点・龍界編 77
(77)
「ただオレ達はオレ達なりにお前と塔矢の事を大切に見守っていきたいと
思っている。それだけは信じてくれ…。」
そう言って伊角と和谷はお互い目を合わせあい、ヒカルを見つめる。
「…ありがとう、伊角さん、和谷。」
ヒカルは心を強くするのは、人との結びつきだと思った。置かれた一つ一つの
石が他の石と結びつき合い、一度消えたと思ったつながりがまたこうして
結びついていく。人との繋がりに意味のない石などない。
緒方との会話からそんな事を思い返していた時そこへアキラがやって来た。
「二人で何話しているんですか?」
「へへ、何でもない」
離れた場所で桑原が面白げにそんなヒカル達を見ていた。その桑原に
棋院の関係者が話し掛ける。
「凄いねえ、あそこ。今を時めく三強そろい踏みだ。進藤君と塔矢君、
二人のうち今度の対局の勝者が緒方十段に挑戦するんでしたよね。」
「…三匹の龍が、三つ巴に睨み合っとるワイ。」
「龍…ですか。」
「…龍は龍を呼ぶんじゃよ。」
―そして、
緒方と別れ、アキラとロビーを出る時、ヒカルはアキラを呼び止め、
ある物を手渡した。
「…オレ、家を出たんだ。ぜんぜん狭くて汚いアパートだけど…」
渡された部屋の合鍵を、アキラは宝物のように握りしめた。
〈龍界編・了〉
|