初めての体験 77 - 79
(77)
「あ…あ…ああん…」
ヒカルは佐為を真似て、自らを懸命に嬲った。指で軽く輪を作り、上下にさすったり、
先端を指でくすぐったりした。
チロチロと舌を覗かせながら、喘ぐヒカルはとても子供とは思えない色気を発していた。
その姿に佐為の情欲はますます高まる。
「あふ…はあ……あぁ!」
ヒカルは、小さく呻いて、自らの欲望を解放した。掌には、初めて自分が放出した物が
べったりと付いていた。青臭くて、変な匂いだ。『早く手を洗いたい』とヒカルは思った。
「ヒカル…それを指先になすりつけて、後ろに入れるんです。」
佐為が、まだ息の荒いヒカルに命じた。
「……?後ろって……お尻のこと!?」
ヒカルが、呆然と佐為を見つめた。佐為は黙って頷いた。
「え!やだよ!汚いじゃん――そんなとこに指を入れるなんて―――」
一気に身体の熱が引いた。ヒカルは佐為に猛然と抗議した。
「でも、ヒカル…それじゃ、まだ、物足りないでしょう?」
佐為が、氷山でも溶かしかねない熱い眼差しを、ヒカルに向けた。途端に、一旦静まった
はずのヒカルの身体が、ドクンと熱く脈打ち始める。
「え…?ウソ…?治ったんじゃないの?へんなやつ出して腫れが引いたのに……」
ヒカルが狼狽えた。物足りないのは、ヒカルではない。佐為である。彼は、もっともっと
ヒカルが幼い身体をくねらせて悶える様を、ヒカルの痴態を見たかった。
触れることが出来ないのなら、せめてヒカルの全てを余すところなく見つめていたい。「ね?まだ、足りないんですよ。」
佐為がヒカルにニコリと笑いかけたとき、ヒカルはもう喘ぐことしか出来なくなっていた。
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ヒカルはベッドの上で四つん這いになった。そして、佐為の言うとおり、自分の
放った物を指の先につけて、後ろに回した。だが、さすがに中に指を入れることには
抵抗があって、ヒカルの指は周辺を彷徨った。だが、佐為に無言で促され、ゆっくりと
中指をそこに沈めた。
「うぅ……!」
痛みに呻くヒカルに、佐為の静かな声が届く。
「そうです。そのまま、前後に動かして…」
ヒカルは、佐為の言葉のままに、一本ずつ指を増やし、操った。
「は…あ…あぁ…」
いつしか、ヒカルの唇からは苦痛の呻きではなく、快感に啼く甘い声が紡ぎ出されていた。
だが、その甘い声に苦痛の色が混じり始めた。
「あ…だめ…だめ…だめ…だめだよぉ……」
身体の奥がくすぶって熱いのに、ヒカルの小さな指ではそこに届かない。自分の行為で
悪戯に身体を煽られ、ヒカルはますます身悶えた。佐為は『自分に肉体があれば、ヒカルの
望みをすぐに叶えてあげられるのに……』と、臍を噛んだ。
ふと、机の上を見ると、ヒカルの筆記用具が散らばっていた。そこには、十五センチ程度
長さのマジックペンがあった。それほど、太くなく、まだ幼いヒカルには、これで十分
だと思われた。
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佐為の声がヒカルにそれを告げる。ヒカルは、素直にその命令に従った。この出口のない
快感を何とかしてくれるのならば、ヒカルは、悪魔の命令にも従うであろう。そうして、
机の上のそのペンを取ると、再び、ベッドの上に這った。
指でよくほぐされたそこは、簡単にそれを受け入れた。無機物の冷たい感触に、
ヒカルの身体は震えた。先ほどと同じように、ゆっくりと、そして、徐々に早く動かし
始めた。
「あ…ああん…いい…きもちいい……きもちいいよぉ…んん…」
ヒカルの口からひきり無しに、嬌声が漏れる。小さな尻が、大きく揺れた。
「はぁ…あん…ああ―――――――」
ヒカルは、二度目の精を放った。
「佐為…すごくよかった…碁を打つとこんなにいいんだね…」
ヒカルの潤んだ瞳が、うっとりと佐為を見つめた。
「強い相手と打てば、もっといいですよ。」
「相手が強ければ、強いほど得られる物も段違いですからね。」
佐為は、愛おしげにヒカルを見つめ返した。
「強い相手と対峙するだけで、気持ちが高揚し、恍惚感が体中を支配するのです。」
佐為の言葉は難しすぎて、ヒカルにはよくわからなかった。わかるのは、強い相手と
対局すれば、もっとすごい体験ができると言うことだけだ。
「強い相手?塔矢みたいな?」
「ええ…塔矢でも塔矢の父親でも…とにかく強い棋士と一局でも多く打つことです。」
ヒカルは、先ほどの余韻に浸りながら、目を閉じた。
「オレ…塔矢と打ちたいな…打てるかな…」
「きっと打てますよ。ヒカルは、今よりもっと強くなりますからね。」
佐為の力強い言葉に安心して、ヒカルはそのまま眠ってしまった。そのあどけない寝顔は、
佐為を信頼しきっていた。
ともあれ、この一件で、ヒカルの碁に対する認識と情熱が、ひどく歪んだ物になったことは
間違いなかった。
――――――パタン、とシステム手帳を閉じた。
ヒカルは、手帳を鞄の中にしまうと、そのまま、鞄を肩に背負った。
「佐為……オレ頑張っているからな……」
ヒカルはそう呟くと、神の一手を目指すべく、対局場へと向かった。
<終>
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