平安幻想異聞録-異聞- 78
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言われた言葉の意味が飲み込めず、ほんの一時ヒカルはポカンとしてしまった。
――オレが座間のものにって……え?え?
「先だっての下弦の月の夜は、楽しかったのう、検非違使殿。
儂は正直、あの夜の夢が忘れられん」
「な…に、言って……」
戸惑うヒカルに、座間が笑った。
「わしがお前を使って、佐為の奴や、行洋の失脚でも狙うとおもうたか?
そのようなこと、わざわざお前ごとき小者を使わんでも、いくらでもやりようはあるわ。
儂がこうしてお前がここに来るようにしむけた目的などただひとつ。これよ」
座間が持っていた扇を閉じて、それでヒカルの喉のあたりに触れた。
そのまま手を持ち上げて、扇でヒカルの頬をなでる。
「単に美味いだけの美酒なら金さえあればいくらでも手に入るが、
こういった珍しい類いの酒は金を積んだだけではなかなか手に入らぬでのう」
ヒカルはおそるおそる答えた。
「佐為の警護をやめて…、あんたの警護をしろってことか?」
「分からぬお子じゃのう。儂はおまえの体が欲しいと言っておるのだ。
儂が飽きるまで、毎夜のごとく寝所にはべり、閨の相手をせい、とな」
ヒカルの体が震えた。
「したれば、あれを縛ってやってもよい」
「一介の検非違使ごときの者を、座間様がお抱え下さろうというのだ。
感謝こそすれ、断るいわれはあるまい」
菅原が口をはさんだ。
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