平安幻想異聞録-異聞- 79


(79)
「佐為などの元で飼い殺しにされるには、おしい味よ。お前が、明日から名目上は
 わし付きの警護役として、この屋敷に住み込むというのなら、陰陽師に依頼して、
 あれを縛ってやらんでもないが、どうする」
どうもこうもなかった。
ここに来ると決めた時から覚悟は出来ていた。
佐為の命や、行洋様の命に関わること、自分の心に反することを要求されるのなら、
迷わずにそうしようと。
ヒカルは腰の太刀に手を伸ばし、白刃を引き抜くと、その刃を自分の首に当てた。
その刃を思いきり手前に引いて、すべてを終わらせてしまおうとしたヒカルの手を、
座間の言葉がとめた。
「佐為殿や、おまえの家族がどうなってもいいのかのう」
ヒカルが固まった。
「お前がいなくなり、行き場をうしなった魔物の矛先を佐為殿や近衛の家の者たちに
 向けることなど、たやすいこと。いっそ縛るより金がかからなくてよいわ」
ヒカルの脳裏を、アキラの血に染まった手、佐為の腕の赤い痣の印象がよぎった。
そして、いつも心配ばかりかけている母と祖父の顔。
「さあ、どうする検非違使殿?」
逃げ道はない。
きっとどうにかなるだろうと、誰にも何も言わずここに来てしまった自分は
大馬鹿者だ。
力の抜けたヒカルの手から、太刀がするりと抜け落ち、床板にあたって、
ガランと大きな音を立てた。
「好きにしろよ」
うつむいて、ヒカルはつぶやいた。
「おまえのものになってやる。だから、佐為やオレの家族には手を出すな」
座間が満足げに膝をたたいた。



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