検討編 8 - 11
(8)
ヒカルの動きに、アキラはヒカルを見つめたまま小さく頭を振る。
ヒカルの手がアキラのズボンのベルトを外し、ジッパーを引き下げ、そしてアキラの下着の中に潜り込む。
「!」
直接、触れられた刺激に、反射的に目をつぶった。
目を瞑ってしまった分、自分に触れる彼の手の動きをよりリアルに感じてしまう。
恥ずかしい。恥ずかしくて死んでしまいそうだ。
自分の身体がこんなふうに反応してしまうなんて。
それだけでも恥ずかしいのに、それを知られて、触られて、触られた事で余計に反応してしまい、それが
相手には隠しようも無い。
「塔矢…イヤ…?」
イヤ……じゃない。違うんだ、ただ、
「だ…って、」
だって、どうしたらいいかわからない。こんな、こんな事って。
もう、頭は朦朧として、何かを言葉を探す事もできない。
身体の芯を柔らかく弄るものとは別に、胸元に何かが触れるのを感じる。
愛おしむようにそっと触れる唇の、その感触に眩暈がする。
ここがどこで、いま自分が何をしているのか、現実感が全く無い。
何かを思う間もなく、押し寄せる圧倒的な感覚が思考をどこかへ追いやってしまう。
「あ、」
何か、今までとは違う感触のものが敏感な場所に触れて、アキラは小さく声をあげた。
「ああぁっ!」
その次に熱く湿ったものに自分自身を包まれれ、更に鋭い悲鳴を漏らしてしまった。
「や、あ、あ、あ、」
絡みつき、舐りあげる未知の感覚に飲み込まれ、流される。
全身が大きな脈動に包まれて、弾けそうに熱く膨れ上がるのを感じる。
押し寄せる快感の波に抗えずに、あっという間にアキラはその熱を勢い良く放出して果てた。
(9)
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、」
荒く息をついている彼の顔を覗きこむようにして、彼の名を呼ぶ。
すると彼はゆっくりを目を開けて、自分を認める。
潤んだ瞳がそれでも真っ直ぐに自分を見ていて、そこに込められた熱と、紅潮した頬に、上気した表情に胸が締め付けられる。
「塔矢、」
半開きに開かれた唇に指を伸ばして輪郭をなぞり、そっと頬を撫でた。
それから目元から零れる涙を優しく拭う。
これは…誰だろう。
アキラは思考の戻らない頭で、自分を覗き込む顔を、愛しげに触れる指先をぼうっと眺めた。
「とうや、」
この声は誰のものだろう。
聞いた事も無い、こんな優しい、熱っぽいい響きは。
名前を呼ばれるだけで、好きで好きでたまらない、そう言われているように感じてしまう。
「とうや、」
けれどその声は低く掠れてどこか苦しげでもあって。
手を伸ばして頬に触れる指を捕らえ、指先にそっとキスした。
爪の磨り減った指先が愛おしい。
ずっとキミに会いたかった。
ずっとキミを、待っていた。
そんな苦しそうな顔をしないで。
大丈夫だよ。ボクもキミが好きだから。
そして目を開けてヒカルに微笑みかけ、彼の目を見つめながら手を伸ばし、彼の首に腕を絡めた。
(10)
「…とう…や…っ…!」
抱きついてきた熱い身体をヒカルは強く抱きしめた。
頬に熱い吐息を感じる。
「しんどう…」
熱い擦れ声が自分の名を囁くのを聞いて、唇が頬に触れるのを感じて、全身が熱く燃え上がったような気がした。
背を抱きしめていた手を腰に滑らし、更に剥き出しにされた双丘に辿りつき、そっとそこを撫で擦った。
すっかり弛緩したアキラの身体はヒカルの手に委ねられて、ただヒカルの手の動きに甘い息を漏らす。
「塔矢…」
それからヒカルは中途半端にアキラの脚に絡まっていたズボンと下着を剥ぎ取った。
「……ん、」
「とうや……」
耳元で彼の名を囁きながら彼の身体を横たえ、素早く服を脱ぎ捨て、そしてアキラの足を割り開く。
「あ……な、に……?」
「塔矢、ちょっとだけ、ガマンして…」
「え……あ、う、うわっ!」
「ごめん、塔矢、でも、」
「や…やめ、やめろっ!なにするんだっ!」
「い、いた、痛い、痛い、痛いってば!イヤだ、やめろ、進藤!!」
「やめろっ!放せっ!!」
(11)
とうとうアキラの足がヒカルを蹴り落として、ヒカルは床に転がった。
「………………いってぇ……」
床に打ち付けられた腰を擦りながらヒカルが身体を起こす。
「………ひでぇよ……塔矢ぁ…」
「何だと?ひどいのはキミの方だ。何を考えているんだ、キミは!一体今、何をしようとした!?」
「何って……」
「そんな所にそんなモノ入る訳ないだろう!」
「入るはずなんだけど…」
「入るもんか。女じゃないんだから、」
「大丈夫なはずなんだよ…!」
「何を根拠にそんな事を、」
「だからぁ、そこに挿れるんだよ、男同士の場合は。」
「ウソをつけ!でたらめを言うな!!」
「でたらめじゃねぇよ!ホントだよ!!」
不信感もあらわにヒカルを睨みつけるアキラに、ヒカルは唇を尖らせて言う。
「だからぁ、えー、うん、男の場合はソコに挿れるの。そーゆーもんなの。」
返事もせずに疑いの眼差しを向けたままのアキラに、もう一度念押しのように言ってみる。
「どうしても疑うって言うんなら、賭けてもいいぜ。」
賭けるというのが何を賭けようというのかヒカルの目が雄弁に語っているような気がして、更に自分
はその方面の知識には疎いのだろう事も薄々は自覚していたので、アキラもやっとヒカルの言うこと
が全くのでたらめではないのだろうという事を、不承不承ながらも認めた。
「…どこでそんな知識を仕入れてくるんだ、キミは。」
「えー、それは、まあ、その、色々と…」
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