Birtday Night 8
(8)
「…あ、そうだ。プレゼント用意してたんだ。気に入ってもらえるといいんだけど」
そう言って、進藤は持ってきていた紙袋を差し出した。
「なに?」
袋の中には和紙で包装された正方形の箱が入っていた。
「開けてみていい?」
進藤が頷いたので、ボクは箱を取り出した。丁寧に包装紙をはがしていく。
現れた白い箱。開けてみると中に碁笥が入っていた。
ゆっくりと蓋を取る。
「――」
目に飛び込んできたのは緑。
深海の底を思わせる趣のある色をした緑の碁石だった。
「その緑、すげー綺麗だよな。何か…おまえの色だって思った」
深く吸い込まれそうな色をした石。
ふれると、心地よくて、すぐに指になじむ感触。
「いやぁ、本当、何にしようか悩んだんだぜ。おまえが喜びそうなものなんて思いつかねぇしさ。
囲碁ショップで見つけたんだ。囲碁バカのおまえにはピッタリだろ?…って、わわわっ!」
言ってから、しまったと思ったのか、進藤は慌てて自分の口を両手でふさいだ。
ボクは胸が詰まって 「――ありがとう」 それだけ口にするのがやっとだった。
心からの感謝の言葉。嬉しかった。胸がいっぱいになった。
これが進藤の中のボクの色。進藤から見たボクはこんな風に映っているのか。
…来年の進藤の誕生日にはボクもお返しに碁石を贈ろう、と思った。
彼は碁笥の蓋を開けて、何の変哲もない石に不思議そうな顔をするに違いない。
真っ白な碁石。ボクを照らし出してくれる白い光、それがキミの色……。
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