第162局補完 8
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そっとアキラを抱きかかえながらヒカルは耳元で囁く。
「塔矢……オレの事、好き…?」
応えないアキラに、ヒカルはもう一度耳の付け根にキスを落としながら、ねだるように彼の名を呼ぶ。
「ねえ、塔矢、」
「……好きじゃない。」
アキラは目を開けて、ヒカルを見上げて言う。
「好きじゃない。キミなんか。
好きじゃない。嫌いだ。大っ嫌いだ。」
そう言いながら乱暴にヒカルの髪を掴む。
「好きなもんか、キミなんて。」
そして髪を掴んで引き寄せ、唇を合わせる。
「…と……」
言いかけたヒカルを遮るように、ヒカルを睨みながら言う。
「キミなんか好きじゃない。
ボクは、ボクはただ、キミと碁が打てればよかったんだ。それだけでよかったんだ。
それなのに、」
また強く髪を引っ張られて、ヒカルは小さく声をあげた。けれどアキラはそれに構わずに続ける。
「打つだけじゃ足らないなんて、そんな事、思うはずないんだ。
もっと色々話をしたいとか、ただ一緒にいたいとか、そんな事、思うはず、ないんだ。
もっとよくキミを知りたいとか、キミの全部が知りたいとか、キミとキスするのが気持ちいいとか、
こうして抱き合ってるのが好きだとか、そんな事、思うはずないんだ。」
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