無題 第2部 8


(8)
「ごちそうさま、ありがとう。」
芦原の作ってきたおかゆを食べきって、アキラは芦原に礼を言った。
あれ以来ほとんど何も食べていなかったから、それなりに空腹だったのかもしれない。
「台所散らかしちゃったよ…後で片付けとくけど、ゴメンな。」
「ううん、大丈夫だよ。今、週に2日家政婦さんが来てくれてるから、そのままにしておいても、片付
けてくれると思う。」
「そうなのか?ハハ、慣れない事すると、後始末が大変だよね。」
そんな、芦原の屈託のない笑顔がアキラを安心させた。
この人は変わらない、アキラはそう思った。アキラには芦原の変わらなさが嬉しかった。
この人に言ってしまおうか。この人なら、何か答えてくれるのではないか。
そう思って、呼びかけてみた。
「ねぇ、芦原さん、」
けれども、口をついて出てきたのは思っていた事とは違った。
「前に、言ってましたよね。
誰かの顔が、目に浮かんで離れない、いつもそのひとの事ばかり考えてしまう、それが、恋だって。
芦原さんにはそんな人がいるんですか?」
以前に聞かれた時とは違う真剣なアキラの表情に、芦原は若干戸惑いながらも、同じように真剣
に返した。
「…いるよ。いや、いた、って言うべきかな。…もう、…ダメになっちゃったけどね。」
芦原は過去の痛い経験を思い出して、しんみりして言った。
それから、アキラに問い返した。
「オマエにはいるのか?そういうヤツが」



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