バレンタイン 8


(8)
「た、かしさん…」
「さあアキラたん。オレは10時まで仕事なんだ。もう遅いから明日会おうか」
送っていけなくてごめんねアキラたん。本当は一人で帰すのなんか怖いくらいなんだよアキラたん。
俺はタクシーを呼んでやろうと一緒に外に出た。
ドアの外にあるタクシー会社専用の電話の受話器を上げても、俺はまだ迷っていた。
男の運転手は駄目だ。この儚くて美しく可愛らしい恋人に何をされるか判らない。
だからといって女もどうだ。最近の女も大概恐ろしい。
「困ったな…」
受話器を下ろし、8cm下のアキラの瞳と見詰め合う。
「アキラたんを預けるに足る人間を思い出せないよ」
「あの、尚志さんの部屋で待ってちゃ駄目ですか?今日は帰っても誰もいないんです」
――帰っても誰もいない、というのはアキラの『泊まりたい』という言葉の代名詞だ。
俺はポケットからここから歩いて5分のところにあるアパートの鍵を取り出すと、
アキラたんの手のひらに握らせた。
「一人で大丈夫?」
「ええ」
アキラは儚げな微笑を浮かべ、両手で俺の鍵を包む。そんな大層なものではないのに、
アキラは壊れそうな宝物を手にしたときの慎重さを見せた。



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