アキラとヒカル−湯煙旅情編− 8
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アキラは、グラスを交わすと、一息に飲み干し、「ふうっ、おいしい。」と、満足げな笑みを浮かべた。一同があっけに取られていると、加賀に注がれた二杯目のビールもぐびっと一気にいった。
「へえ、イケルクチかい。」面白いといった風に加賀が三杯目を注ぐ。
「おい、塔矢、大丈夫かよ。」ヒカルが心配そうに伺っている。
「大丈夫だよ。子供の頃から門下生の人達に飲まされてたから。」
「よし、オレも。」ヒカルもビールを一息に飲んだ。
「ちゃんと食って飲めよ、悪酔いすっからな。」そう言いながら加賀はビールから焼酎に切り替えてじっくり飲みの姿勢に入っている。
筒井は苦いビールを舐めながらふと、思う。今日の加賀はどこか違う。ずうずうしくて、自信家で、不良で、飄々としてて、だけど憎めない、心根は優しい加賀・・・でも、今日の加賀は、何か違う、なにか・・・そう、なにか少し、淋しそうに見える。
「う〜ん。」筒井は苦いビールを口内に流し込んだ。
宴は盛り上がった。
昔話や取り止めのない話に花を咲かせながら美味しい料理に舌鼓を打つ。酒も入って輪はさらに盛り上がった。アキラも楽しそうに話に加わっている。最初は心配だったけど加賀達と会えてよかった、とヒカルは思った。
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