初摘み 8


(8)
 「お風呂…ありがと…」
自室で待っていたアキラに、ヒカルがおずおずと声をかけてきた。新品のパジャマは少し
大きかったらしい。袖や裾の辺りがだぶついている。
「いい具合にゆだっているね。」
実際、ヒカルの身体からはまだ、湯気が立ち上っている。頬も、首筋もほんのりと薄紅色に
色づいて、そのまま食べてしまいたいくらいだ。
 だが、アキラの軽口に、ヒカルは何も言わなかった。ただ、黙って俯いている。アキラを
意識して何も言えないのだ。ヒカルの心臓の鼓動がきこえてきそうな気がした。
「そ…それじゃあ、ボクもお湯をもらってくるよ。」
ヒカルの気持ちが、自分にも感染したらしい。さっきまで、何ともなかったのに何だか
胸がドキドキしてきた。
 ヒカルの横をすり抜けて、浴室に行こうとした。その瞬間にヒカルの身体から、甘い香りが
漂ってきた。いつも自分が使っているシャンプーと石鹸の匂い。それなのに、まるで違う
香りのように感じた。
 無意識のうちにヒカルを抱きしめていた。
「と…う…や…」
自分を呼ぶ唇に軽く触れた。そして、ヒカルを解放した。気持ちを鎮めようと思った。
そうでないと、熱情のままヒカルを乱暴に扱ってしまいそうだ。

 頭から、何度も水をかぶった。自分がヒカルとまったく同じ行動をしているなどと、
思ってもいなかった。



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