heat capacity 8


(8)
「お、……オマエの事だよ、決まってるだろ…」
言いながら視線を外す。浅い呼吸を繰り返す唇は微かに震えていた。彼は往々にして解り易過ぎる。
「嘘をつくな。今だけじゃない、さっきからずっとだ……キミは対局の事を思い出していただろう」
更に根元を強く握る。
「社の事を、思い出していたんだろう……?」
「や…、ぃた、イタい…っ、やめ…っ、塔…矢っ……!」
「ボクが気付かないとでも思ったのか?」
笑いが込み上げる。何が可笑しいのかは自分でもよく解らなかった。嘲笑のように冷ややかなそれは、もしかしたら進藤の心を繋ぎ止めておく事が出来ない自分に対してのものかも知れない。心が、渇いている。
「進藤……」
余りの痛みに身体を固く竦めていた進藤の身体が一瞬震え、ゆっくりと面を上げる。
「ボクを見ろよ」
「……とうや」
「ボクだけを見ろ……っ」
言って、彼の反応を見ずに口付けた。荒々しいキスだった。
やがて進藤は無意識のうちに手を僕の首に絡ませた。陶酔している。情欲に溺れた声、吐息がそれを物語っている。僕が怒っている事を解っていて、それでもなお、快楽に溺れるのだ、彼は。
「……っっあ!」
進藤が急に襲い掛かった痛みに驚いて、口を離した。
進藤の欲望の徴、その根元に程近い場所に赤い紐が食い込んでいた。
「塔矢、何を……っ」
「何って。キミを気持ち良くしてあげてるんじゃないか。キミはこんな事をされても感じるんだろ?」
「……!!」
言って、紐を更にきつく引っ張り、そのまま結ぶ。進藤が手を下肢に伸ばそうとするが、その手首を捕らえてそれを許さない。
「塔矢!」
進藤も必死だ。なんとか僕の手を解こうとするが、何度も絶頂に登り詰めた身体には殆ど力が残っていない。それでも、諦めずに彼は腕を振り回し続けた。
やがて、その腕から力が抜け、彼は僕を強く睨み付けると容赦なく首筋に噛み付いた。じんわりと痛みが滲んでくる。そして融け出るような温かさ。
何故か僕は酷く安心した。



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