平安幻想異聞録-異聞-<水恋鳥> 8
(8)
もう少しこの状況を楽しんでいたい。
佐為は、ヒカルの瞳をのぞき込んだ。涙の粒に縁取られたそれは恍惚として、
すでに自我を放棄し、ただ快楽を追うことだけに夢中になっているのが分かる。
ヒカルのトロトロとした先走りの液が佐為の腹をよごしていた。佐為は、ヒカルと
一緒に最後を迎えたかったので、ヒカルが先にいってしまわないように、片手で
その根元を強く縛った。
「はぁぁぁっ、あんっ、あんっ、ああっあっ!ふぁんん!……ああ!」
いけそうでいけない苦しいほどの快楽に、佐為の抱きしめていたヒカルの手が、
佐為の胸をかきむしって血が滲んだ。
佐為は眉をしかめた。さすがに自分もそろそろ限界だ。――ヒカルの声も十分に
楽しんだ。
より深く腰を落として、ヒカルの腹をそれで持ち上げるように力強く押し入れながら、
佐為はヒカルの根元を戒めていた手を放した。とたんにヒカルの体が波打つように
痙攣し、普通に頂点に達する時の二回分三回分の快感を一度に与えられてヒカルは、
佐為の腕の中で泣きながら達した。
行為に集中していた間は耳に入らなくなっていた鳥達のさえずりが、どっと
部屋の中に流れ込んできたような気がした。
オオルリが鳴き終わって、今はホトトギスがどこかの梢で声を張り上げている。
ヒカルは、さっきから佐為に抱きしめられたまま、顔を伏せこちらを向こうとは
しない。
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