禁断の章 8
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「もう上がろうぜ!のぼせちまうよ」
湯のせいで顔がほてった進藤は、立ち上がり湯船から出ようとした。
和谷も上がろうと腰を浮かす。
ヒカルが足をあげた時点で内股にある赤い花のような痣が和谷の視界に
映った。俗に言うキスマーク。
!・・・?・・!?し・・進藤?
ヒカルは和谷が自分に続いて出ようとしないので、いぶかしげに
振り向いた。
変な顔をしている。
?
「和谷?どうした?」ヒカルは和谷の方に歩み寄り顔をのぞき込んだ。
「な・・なんでもないよ・・はは」和谷は引きつる顔でなんとか笑った。
「変な和谷・・」ヒカルはきびすを返して入り口まで歩いていった。
和谷は一時湯船から上がらず考え込んだが、身体が熱くなって頭がふらふら
し始めたので急いでヒカルの後に続いた。のぼせたようで立ちくらみがした。
”あれは見間違いだよな・・まさか進藤に限って”
和谷は進藤を横目で見ながら頭の中でつぶやいた。
ヒカルはほとんど服を着込んでいたため、和谷の方を振り向いて
「ほら和谷なにぐずってんの?・・時間なくなるじゃん!」と
ごちていた。
「げ、夕飯食えなくなっちまうな」
オレは身体についた滴をほどほどに拭き取ると急いで服を着込んだ。
「じゃな和谷!」
「おう、気をつけて帰れよ」
オレと進藤は駅で別れた。一緒に夕飯を食べても良かったのだが
家で食事を用意してくれてる母親に悪いからと進藤は、
ごめんと断った。
この時、送っていけば良かったと後悔した。
あいつの家まで。
でもその時のオレは、進藤は男だから。
あいつに感じた邪な思いを否定したくて進藤に悪くて必要ないと思った。
実際、言ったところでいいよと進藤は云うだろう。
女顔でなよなよしてると思われて不愉快だと進藤がいつか愚痴をこぼしたことが
あったっけ。塔矢アキラも昔は女に見られがちだったが、いまじゃ・・・
ここまで思って電話が鳴った。
外で飯食って時計は午後11時を指していた。
「ヒカルの母です。夜分ごめんなさいね。
和谷くん、ウチのヒカルおじゃましてないかしら」
進藤のおかあさんからだった。
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