恋 Part 4 8


(8)
進籐の中は熱い。
熱くて熱くて、そこから溶けてしまいそうに思えて、怖くなる。
だけど、この形だと、冷たい尻肉が僕の太股に触れて、それは幻想なんだと教えてくれる。
溶けてしまえればいい。
ふたりとも、体中の隅から隅まで、熱くなって、溶けてどろどろになって、一つになれたらどんなにいいだろう。
そうしたら、僕の胸に芽生えた違和感も、そこから生じる不安も、虚しさも、全て消えてなくなってしまうだろう。
そうなったら、どんないいだろう。
僕は頭の隅でそんなことを考える。
でも、冷静に考えていられるのは、僅かな間だ。
すぐに、進籐の熱が、僕の全てを支配してしまう。
蕩けるような靡肉が、僕のペニスに、絡みつき、締め上げる。
幻想が現実と思える。一瞬。
一つに溶け合っているという、甘い錯覚に全てを委ねることができる、一瞬。
その一瞬に向かって、僕は本能の命じるままに、動く。
吹き出した汗で、互いの肌がぬめる。
僕は下から何度も突き上げる。
角度を変えて、何度も、何度も。
僕が突き上げるたびに、進籐は短い息を漏らす。
それは、長距離走の選手のようだ。
時折そこに甘い悲鳴が混じるのは、進籐の善い所を掠ったからだろう。
「あっ、ん……」
鼻にかかった声とともに、進籐が駄々をこねる子供のように、首を左右に激しく振る。
色素の薄い前髪が、薄暗がりの中、左右に散る。
欲望に満たされた僕の目に、それはスローモーションのように映る。
なんて、僕の進籐は綺麗なんだろう。
彼が、快感に喘ぐ姿は、僕を煽りたてる。
もっと感じて欲しい。もっと僕を感じて欲しい。
僕だけを。



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