りぼん 8
(8)
だいたいコイツの金銭感覚、絶対おかしいと思う。
平気でぽんぽん出すんだ。ありがたく受け取ったけどさ、オレへの誕生日プレゼントだって、
万はいってるはずだ。
よくそんなの贈る気になるよな。オレだったらいくら塔矢でも、絶対にできない。
まあ、塔矢はタイトルをいくつも持ってた塔矢先生の息子だからなあ。
なんてことを考えてると、塔矢が呼びかけてきた。
「開けるよ」
塔矢が金色のキャップをはがして、針金を外した。それから真剣な顔して、コルクを押さえ
ながら少しずつずらしていってる。
いきおいよくポンッていうのをオレはわくわくしながら待った。
なのにかすかにシュッと空気が抜ける音がしただけだった。
オレの拍子も抜けた。
「なんでぇ、つまんねーの。どうしてコルクが吹っ飛ばないんだよ」
「そんな開け方をしたら旨味が逃げてしまうから、してはいけないと言われたんだ」
白い布で口の部分を拭くと、オレのグラスにそそいでくれた。
泡がシュワシュワッて後から後から出てくる。キレイだ。
「進藤」
塔矢がオレに期待のまなざしをむけてきた。オレは一つ咳払いをした。
「誕生日おめでとう、塔矢」
「ありがとう」
グラスを軽く当てた。チンッて高くて澄んだ音がした。
飲んでみると、まず甘みを感じた。それから炭酸が舌を刺激してきた。なんか気持ちいい。
シャンパンって飲んだことあるけど、こんなに上品な味だったっけ?
まろやか、って言葉がぴったりだ。本当に飲みやすくて、グイグイいけちゃいそうだ。
けど酔っ払うから、ジシュクしたほうがいいよな。
「塔矢、他に飲みものある?」
「ワインも用意したけど」
「……アルコールの入ってないやつ」
塔矢はちょっと残念そうに肩をすくめた。コイツ、オレを酔わす気だったな。
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