スノウ・ライト 8


(8)
フクはすっかりいい気になって、またその食い意地からヒカル姫の下の果実をも食べよう
ともくろみます。ドレスの中へとその丸みを帯びた手を入れました。
「や、だ……フク……」
ヒカル姫は涙目で訴えますが、それがさらにフクの情欲を煽ります。
万事休す! と思いきや、バタン! とドアが開いてホンダが入ってきました。
そしてフクを抱えるとそのまま窓の外へ放ってしまいました。
「よしっ! よしっ! 四人目だ! ヒカル姫を手に入れられる可能性はある!」
そう叫ぶとちらりとヒカル姫を見て、ゆっくりと近付いてきました。
ヒカル姫、身の危険を感じて壁際へと擦り寄りました。しかし逃げ場がありません。
ホンダの手が伸びてきます。ところが、またもやバタン! 
今度は異臭を放つオチが入ってきました。
「オ、オチ! トイレにこもらせたのに……」
「ホンダさん、必死だな。はん! そもそもヒカル姫を意識しすぎなんだよ」
などと言いながら、オチの視線はヒカル姫から離れません。
アダチ、イイジマが這いつくばりながら入ってきました。ホンダにやられたのです。
一言も発せず、気絶してしまいました。
ホンダとオチはヒカル姫を挟んでにらみ合っています。
おどおどとその様子を見ていたヒカル姫でしたが、勇を決して言いました。
「オ、オレはそばかすのたらこ唇も、便所臭い細目もイヤだ!」
ヒカル姫、実は面食いです。二人はショックを受けた顔をしました。
そして一瞬後、ホンダの目から滂沱たる涙が!
「……うっ、うぅう〜」
ホンダの泣き声です。この世のものとは思われません。その泣き顔はお世辞にもかわいい
とは言えないものです。口元を押さえて出て行ってしまいました。
オチの目からも滝のような涙が流れています。
「ボクは金持ちだ。オバタ医院で整形手術を頼んでもらう!」 
オバタ医院はその筋では有名な美容整形の病院です。
某狩人や隣国の王子の御付きもそこに通ったと言われています。
「ボクのうしろにはトウヤ国の王子がいる! この次は負けない! この次は!」
言いながらトイレに入ってしまいました。中からはハァハァという荒い息遣いと、どこか
をトントンと叩いている音が聞こえてきました。



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