やりすぎ☆若゙キンマン〜ヒカルたん癒し系〜 8
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「怖い…怖いよ、トーマス!」
泣きながら抱きつくヒカルたんをトーマスは無言で見つめる。自分がどれだけ重い罪を犯
したのかわかった気がして、トーマスは抱きしめることができなかった。
強引に若゙キンマンの記憶をトーマスに変換したのだ。それによってヒカルたんが混乱を生
じるのも無理なかった。
ヒカルたんに飲ませた薬がそのようになるとは考えもしなかったトーマスは、苦しむヒカ
ルたんの顔が痛々しくて見れない。だが解毒剤などがわからない以上、この状況からヒカ
ルたんを救う方法は何もなかった。
「大丈夫。オレが何とかするから…絶対助けてやるから」
トーマスはそう言ってヒカルたんを慰めることしかできなかった。
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翌朝、ヒカルたんは朝早くからパトロールに出かけた。
「考えても考えてもわかりません。いったいヒカルたんはどうしたというのですか? 若゙
キンマンは何故帰ってこないのですか? トーマス、何か知っていたら教えてください」
一人で朝食を食べていたトーマスに、佐為は暗い顔で尋ねる。目の下にはくまがあり、昨
夜はよく眠れなかったことがわかる。
トーマスはヒカルたんを得るという自己中心的な願望のために、大切な人を傷つけてしま
った自分が情けなくなった。ヒカルたんを若゙キンマンから守ることは正しいとずっと考え
ていたトーマスは、その正義のためならどんな手を使ったって構わないと思っていた。だ
が自分のしていることが正義ではないと思い始めると、どんどん罪悪感で押しつぶされそ
うになる。
トーマスは思い切って佐為に告白しようとも考えた。だがそうすれば自分の信用がなくな
るどころか、この町から追い出されてしまう気さえする。そう思うとトーマスはなかなか
言い出せないでいた。
「ごちそうさま。オレもパトロールに行ってきます」
トーマスは佐為から逃げるように碁会所を飛び出していった。
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