8 - 9
(8)
ヒカルとて男子中学生だ。囲碁に明け暮れる毎日とはいえ、運動神経には自信がある。そのヒカルを上回る俊敏さで、男は片方の手でヒカルの首を押さえつけ、もう片方の手でヒカルにハンカチをあてがった。
「うわっ!何すんだっ…!」
抗議の言葉も言い終わらないうちに、ヒカルの意識が飛んでしまった。
「おとなしくするんだな…」
男の言葉を聞きながら…
(9)
………すぐそばで誰かがクスクスわらってる。
はっきりしない囁き声が、誰かにヒソヒソと言っている。
(みろよ、こいつ感じやすいみたいだぜ)
(女、みたいな顔してるもんな)
と返したヒソヒソ声はイヤラシイ響きを帯びている。
どちらも、聞き覚えのない声だった。いや、聞いたこともあるような…やっぱりわからない。どちらにしろ頭がぼんやりしていて……
「んっ」
と息が鼻から抜けてった。体の中をゾクンッと電気ショックみたいなのが走ったせいだ。それは何度も何度も、繰り返し体の中を走り、その度にジワンッて感じの甘いしびれが広がって、すごくイイ。
「ん……んっ……ん〜……」
(ふふっ、ほら、感じてるぜ。特に右がイイらしいな。)
俺ははっきりしない意識の中で身悶えた。
あっ、だっだめ、そこは舐めないでっ……
「あんっ」
しまった。声がでちゃった。一体誰がこんなこと…
ヒカルは重たい頭を持ち上げて声の主を確かめようとした。
|