失着点・展界編 80
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それは和谷と同じくらいぎこちない、荒っぽいキスだった。伊角自身
初めての経験なのか、次第に興奮し呼吸が荒くなって来る。
そのの最中に、ビクッとヒカルの体が反り返った。ズボンのファスナーを
下げて、露にされたヒカル自身を和谷が口に含んだのだった。
「うっ…ん!!」
ヒカルは首を振ってようやく伊角から顔を離した。涙が頬を伝った。何より、
信頼していた伊角にこういう事をされることが信じられなかったし辛かった。
精神的に拒否しても、和谷の局部への愛撫に肉体的に反応し熱い吐息が
漏れそうになる。そんな息の下でヒカルは問いた。
「…伊角さん…どうして…」
「…進藤が、無防備すぎたんだよ。言っただろう。お前は自覚がなさ過ぎる
って…。…オレもいつから変になったのかな…。」
伊角は熱い息と共にヒカルの耳たぶや首筋にキスを這わす。
「和谷の苦しみ様は、そばで見ていて辛かったよ。忘れられないんだよ。
お前の事が。もう一度だけ、もう一度抱きたいって…。」
「…っ!!」
伊角の愛撫と呼応するように、否応なしに下腹部の感覚も高められて行く。
「オレにも今、和谷の気持ちが分かる気がするよ…。」
ヒカルは必死に歯を食いしばり、到達させられる事に抗った。
「それでもギリギリまで迷った。和谷を思い留まらせないといけないって。
…だけど、今日の塔矢は…やり過ぎた。」
和谷が激しくヒカル自身を吸い立て、ヒカルの下肢がビクンと震えた。
「だから少しだけ、二人で塔矢から進藤を奪う事にしたんだ…。」
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