初めての体験 81 - 83


(81)
 負けた………。
強くなったと言っても、やっぱり岸本には勝てないのか。これじゃあ、塔矢と打つなんて、
夢のまた夢だ……。
 ヒカルは、泣きたくなってしまった。自然と俯いてしまう。ふと、視線を感じて顔を
上げると、一瞬、岸本と目があった。岸本は、すぐに視線を逸らした。気のせいか、頬が
赤らんでいるように見える。
 実際、岸本はやや冷静を欠いていた。碁盤に向かうヒカルの真剣な姿。勝負がついた後の
情けない泣きそうな表情。自分を見つめる大きな瞳。ヒカルの一瞬の表情の全てが、自分の
心に突き刺さってくる。自分でも、説明できない感情が湧き上がってきた。
 それを隠すために、アキラのことを話し続ける。ヒカルにとっては、少々耳の痛い話題も
混じっていた。

 「ヒカル…これは良い機会です…」
ヒカルの傍らに佇んでいた佐為が、声をかけた。ヒカルは、視線だけを後ろに向けた。
「この少年、どうやらヒカルに気がある様子…あっちの方も試して見ませんか?」
「え…でもぉ…」
ヒカルは気乗りしない。だって、今、負けたばかりなのに…。そんな気になれない。
「何を言うんです!強くなるためには、一局でも多く打ちなさいと、いつも言っているで しょう?強くなりたくないのですか?」
「強くならなければ、塔矢は歯牙にもかけてくれませんよ?」
その一言でヒカルの腹は決まった。


(82)
 「うわあぁぁぁん!」
ヒカルは、いきなり机に突っ伏して大泣きした。岸本はびっくりして、ヒカルのもとに駆け寄った。
周りの大人達も二人に注目していた。
「ど…どうしたんだ?」
「だって、岸本さん…意地悪ばかり言うんだもん…オレだって…塔矢と打ちたいのに…」
ヒカルがしゃくり上げながら、訴えた。涙を溜めた大きな瞳で、岸本を上目遣いにじっと見つめた。
 その視線が、岸本の腹にズシリと来た。自分の身体の変化に岸本は狼狽えた。ヒカルを
慰めるための言葉も思いつかない。
 「気持ち悪い…」
岸本が逡巡しているのを見て、ヒカルが大げさに餌付いて見せた。如何にも、泣きすぎて、
気分が悪くなったと言わんばかりだ。
「大丈夫か?進藤。」
岸本がハッとして、ヒカルの背中をさすりながら、顔を近づけてきた。ヒカルは、
周りを素早く見回すと、岸本の唇にチュッとキスをした。そして、驚きのあまり声も出ない
彼の耳元で、そっと囁いた。
 「二人きりになりたいな…」
岸本の胸に凭れ掛かり、反応を窺う。岸本の心臓の鼓動が、ヒカルの耳に響いた。
『いける…!』
ヒカルは、確信した。
「岸本さん…オレ…吐きそう…お願い…トイレへ連れていって…」
掠れた声で、甘えるようにねだった。岸本は、ヒカルの肩を抱くと、支えるようにして、
トイレに連れていった。ヒカルの肩に置かれたその手は、微かに震えていた。


(83)
 トイレの鍵をかけると、岸本の方から積極的にヒカルを抱きしめた。もどかしげに、
自身の眼鏡を剥ぎ取ると、ヒカルのふっくらした頬や、ちょこんと真ん中にある鼻の頭、
愛らしい唇にキスの雨を降らせた。
 背中に回された手は、ヒカルの腰や、太股を絶え間なく、さすっている。
「ああ…や…待って…待ってよ…」
ヒカルが堪らず、悲鳴を上げた。岸本は、聞こえているのかいないのか、ヒカルの喉元に
舌を這わせながらも、その手を休ませない。ヒカルの腰を抱きながら、トレーナーを捲り上げ、
滑らかな薄い胸の感触を楽しんでいる。
「ああん!」
岸本がヒカルの乳首を摘んだのだ。そのまま、押しつぶしたり、撫でたりして、ヒカルの
反応を楽しんでいる。
「やだ…あ…」
ヒカルの身体がピクピクと震える。
 ヒカルの甘い声に煽られるように、岸本の手が徐々に下へと移動した。ヒカルのジーンズの
ボタンを外し、下着と一緒にずり下ろした。まだ、幼いヒカル自身は、半ば勃ち上がり、
切なげに震えている。岸本は、それをやや乱暴にさすった。ヒカルの嬌声が、一層高くなった。



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