失着点・展界編 81 - 85
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和谷は素早くヒカル自身から口を離し、左手で先端を包んだ。その和谷の手の
中に生暖かい白濁の液体が噴出されて行く。
「…っ!…」
ヒカルは涙を滲ませた瞼を固く閉じて、声を漏らさぬ様しばらく耐えた後、
「はあっ」と熱い息を吐いた。諦めた訳ではなかったが、自分より体の大きな
二人の男の腕力の前ではあまりにもヒカルは非力だった。
和谷は手の中で脈打つ熱い固まりを愛おしそうに、ヒカルが放ったもので
濡れた手で撫で続ける。根元をきゅっと握り、そのまま先へ送ると内部に
残っていた液体が絞り出される。それらを手にとりそのままヒカルの股間の
奥の方へ持って行ってそこに塗り付けた。
ジーパンと下着を取り払い、ヒカルの両足の間に体を入れて足を広げさせ、
その中央にある入り口の周辺をマッサージするように入念に揉みほぐす。
「大丈夫だよ、進藤…。今度は絶対痛くしないから…。絶対怪我させたり
しないからな…。」
独り言のように和谷が呟く。ヒカルは目を閉じたまま返事をしなかった。
そのヒカルの表情が和谷に見えるようにするかのように、伊角がヒカルの
手首を捕らえたまま体を移動させ、ヒカルの頭越しに押さえ付ける
姿勢になった。
和谷は左手の指を動かしながら右手でヒカルのシャツを首元までたくし上げ、
包帯の先から出ている指でそっとヒカルの乳首に触れた。ピクッとヒカルの
体が震えた。片方にはまだ、うっすらと歯形によるかさぶたが残っていた。
「ごめんよ…ひどい事しちゃったよな…。もうしないよ…。」
和谷はヒカルの乳首を口に含んで、ゆっくりと舌を動かし始めた。
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「それでは、このような構成で進めたいと思います。ごくろうさまでした。」
会報の担当者に頭を下げ、アキラは席を立とうとした。
「あ、それと、塔矢くん、」
「まだ何か…?」
「中国から戻ったばかりで大変かも知れないが、今度岡山の方である中国と
韓国からのプロとアマを招いての交流イベントに参加してもらいたいんだ。」
「それはもう、別の方が決まっていると伺っていますが…?」
「先日の中国での君の対局を見た人達から問い合わせがあってね。是非、もう
一度会ってみたいと言う参加者からの申し入れがあったんだよ。君は今や完全
に将来の日本の囲碁会を盛り立てて行くだろうという期待の星だからね。」
「べつに…ボクはそんな…」
気持ちがそこにない返事をしてアキラは時計を見る。
ヒカルはもう、アパートに来て待っているだろうか。
ヒカルは目と口を固く閉じて何とか精神と肉体を切り離そうとしていた。
和谷にと言うより、自分の中に巣食うものに、捕われたくなかった。
『男とこうする事が好きなのか?』
伊角に言われた言葉を否定したかった。誰が相手でも良い訳じゃない。
それなのに和谷の舌と指でじわじわと防御壁が取り払われていく。
和谷の口の中でヒカルの乳首はふっくらと立ち上がり感度を増して行き、
潤いを与えられた狭門は和谷の指に揉みしだかれて柔軟度を増し、ねっとりと
指の動きに合わせて絡み付いて行く。
その指が奥へと侵攻を開始し、何かを探るように内壁を這い回り始めて、
ヒカルの喉の奥から押さえようがない吐息と共にくぐもった喘ぎ声が漏れた。
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ヒカルの方の準備が整ったと判断した和谷は、伊角を見て、二人でヒカルを
うつ伏せにさせた。ヒカルはもはや人形のように抵抗の気配を失っていた。
にもかかわらず、伊角がヒカルの両手首をヒカルの背中でクロスさせて、
和谷が柔らかいタオルで縛った。
「…ごめんよ、急に暴れ出されたりして、傷つけたりしたくないから…」
そして念には念を入れるように、和谷は小さな化粧品のビンのようなものを
出すと中のローションを手にとって、白く露になっているヒカルの双丘の
谷間を浸した。そして自らズボンを下ろし、固くそり上がった自分自身を
谷間の中心に宛てがった。
ヒカルのウェストを抱え、少し引き上げるようにして、少しずつ押し入る。
最初に多少強めの抵抗感はあったが、やがて吸い込まれるように和谷自身は
ヒカルの体内に根元まで収まった。
伊角は壁際で息を飲んでその瞬間を見ていた。初めて目の前で性行為を、
…男同志が結合するところを見て、固まったまま動けないようだった。
「すげエ…全然違…う…や、柔らかい…」
和谷はヒカルの腰を強く抱き締め、内部の感触を全身で味わっている。
「やっぱり…進藤って…気持ちいいや…」
それまで衝動を抑えて時間をかけて用意していた反動のように、和谷は直ぐに
ヒカルの中で激しく動き始めた。
つい先日に緒方のモノを受け入れたヒカルの狭道は、若干若いサイズの和谷の
激しさをほとんど痛みを伴わず許容した。和谷の動きに体が揺すられる中で
ヒカルは伊角を見た。伊角の視線はヒカルよりやや上の方に向けられていた。
ヒカルの感触を夢中で味わい貪る和谷をじっと見つめているようだった。
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和谷は行き着く直前で踏み止まり、一度ヒカルから抜け出ると再びヒカルの
体を仰向けにして入り、少しヒカルの腰を浮かせその体芯を手で包み込んだ。
一度到達して質量を落としたそれは、狭道を貫かれている刺激で熱を取り戻し
つつあった。その先端を指で刺激しながら、前に屈んでヒカルの乳首を左右
交互に吸う。しばらく反応を示さなかったヒカルが身をよじった。
「…ふっ…うっ」
周辺から先端を責め、軽く歯を立て十分に刺激するにつれ喘ぐ声も強まる。
「…スゲえ締まる…。進藤って…感度良いんだな…」
和谷がヒカル自身を手全体で擦り上げ、その速度を速める。同時に
ヒカルの中での動きも激しくする。
「はあ…あっ…あ…!」
前後を同時に揺さぶられてはひとたまりもなく、額に汗を滲ませてヒカルが
悶えるように首を左右に振る。和谷が何度も妄想した場面が実現していた。
「…見たかったんだ…オレ、進藤のそういう顔…」
上気したヒカルの顔に自分の顔を寄せ、唇を塞ぐと、そのまま一気に和谷は
ヒカルを無理矢理道連れにするように到達した。
「んんっ…!」
しばらく互いに雷に打たれたように体を激しく痙攣させながらも和谷はヒカル
の舌を吸い続け、再びヒカルの体液で濡れた手と体を動かし続けた。
「くっ…んっ…ふんっ…」
ヒカルも口を塞がれ切なく呻きながら体をビクンビクンと震わせ続ける。
そんな二人の様子に伊角は呼吸を荒くし、手で股間を押さえていた。
「…伊角さんも、するよね…。」
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二人の行為を見つめていた伊角は、突然和谷にそう言われて弾かれたように
顔を上げた。
「い、…いや、…オレは…」
「…しないの?オレはてっきり伊角さんも…」
まだヒカルと深く繋がって覆い被さったまま、和谷は少し怪訝そうな顔を
したが、「まあいいや」というように再びヒカルの中で動き始める。
今の一度では味わい切れなかったと言いたげに。
伊角はヒカルを見た。ヒカルは空ろな表情で伊角を見ている。
「助けて」とはもう言わない。ただ、一刻も早く解放して欲しい。そういう
目だった。伊角の中で何かが葛藤していた。だが、何かを決意したような
顔つきになると、立ち上がってズボンのファスナーを下ろした。
ヒカルの目に絶望的な色が落ち、全てを諦めたように目を閉じた。
「…やっぱり、するんだ。」
和谷はヒカルから離れた。ヒカルの両足の間に膝をついた伊角とヒカルの目が
再度合った。もうヒカルの目には何の感情もなかった。ただぼんやりと
伊角を眺めている。その目を避けるように伊角はヒカルをうつ伏せにし、
腰を開いた。赤く膨れ上がった狭門に少し戸惑いながらも、自分の先端を
宛てがい、そっと腰を突き入れる。今まで和谷が埋まっていた名残りと
和谷が放った潤滑液のよってほとんど抵抗感なく先が埋まって行った。
「うっ…」
視覚的な刺激ですでに過敏になっていた伊角のそこは、底なしの沼のような
柔らかな肉壁の味わいに最高潮まで質量を増し、脈打ち始める。伊角は、
和谷が今まで居た場所に自分も入っているということに、興奮していた。
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