初めての体験 82
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「うわあぁぁぁん!」
ヒカルは、いきなり机に突っ伏して大泣きした。岸本はびっくりして、ヒカルのもとに駆け寄った。
周りの大人達も二人に注目していた。
「ど…どうしたんだ?」
「だって、岸本さん…意地悪ばかり言うんだもん…オレだって…塔矢と打ちたいのに…」
ヒカルがしゃくり上げながら、訴えた。涙を溜めた大きな瞳で、岸本を上目遣いにじっと見つめた。
その視線が、岸本の腹にズシリと来た。自分の身体の変化に岸本は狼狽えた。ヒカルを
慰めるための言葉も思いつかない。
「気持ち悪い…」
岸本が逡巡しているのを見て、ヒカルが大げさに餌付いて見せた。如何にも、泣きすぎて、
気分が悪くなったと言わんばかりだ。
「大丈夫か?進藤。」
岸本がハッとして、ヒカルの背中をさすりながら、顔を近づけてきた。ヒカルは、
周りを素早く見回すと、岸本の唇にチュッとキスをした。そして、驚きのあまり声も出ない
彼の耳元で、そっと囁いた。
「二人きりになりたいな…」
岸本の胸に凭れ掛かり、反応を窺う。岸本の心臓の鼓動が、ヒカルの耳に響いた。
『いける…!』
ヒカルは、確信した。
「岸本さん…オレ…吐きそう…お願い…トイレへ連れていって…」
掠れた声で、甘えるようにねだった。岸本は、ヒカルの肩を抱くと、支えるようにして、
トイレに連れていった。ヒカルの肩に置かれたその手は、微かに震えていた。
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