失着点・展界編 86
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和谷は台所でペットボトルの水を飲み、一息ついて伊角の様子を見ていた。
伊角はお世辞にも滑らかとは言えない不規則な動きで、ヒカルが少しでも
声を出したりすると動くのを止めて不安気に伺っている。それでも
伊角自身は十分感じているのか、顔を赤らめ、息は荒いままだった。
反対にヒカルは、さほど快楽を感じていないのか、さっきよりさらに
ぐったりしていた。和谷は口を拭いペットボトルをテーブルに置いた。
「…伊角さん、ちょっと、いいかな…」
行為に夢中になっていた伊角は、和谷に急に話し掛けられ真っ赤になった。
「え…?」
「進藤の体を抱き起こしてよ。」
最初伊角には意味が良く分からなかったようだったが、和谷が膝の上に抱くと
いうジェスチャーをして理解したようだった。
「こ、こうか…?」
和谷も手を貸して繋がったまま伊角がまず床に尻をつけて、ヒカルの足を前に
出させ、伊角があぐらをかいて座った上にヒカルを乗せたかたちになった。
「くっ…」
体を起こされて自分の体重で深く伊角を受ける感じになり、ヒカルは呻いた。
和谷の目前に伊角とヒカルの結合部が曝され、ほとんど気力を失っている
ヒカルと対照的に伊角は興奮を増したように更に赤くなった。
「わ、和谷…?」
「オレ、進藤には、もっともっと感じてもらいたいんだよ…。」
和谷はその部分に顔を近付けると、質量を落として小さく縮みかけていた
ヒカル自身の根元に口に舌を這わせた。ビクンッとヒカルが体を震わせた。
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