初めての体験 89 - 91


(89)
 「―――――!やだ!やだよ!やめて!」
ヒカルは首を振って、自分に施されている行動を止めようとした。それまで、ヒカルの
股間を嬲っていた加賀の指が、ヒカルの後門の周辺を愛撫し始めたからだ。
「お前、いつも、ここだけはさせてくれなかったな…」
「やだ!そこはイヤなんだよぉ……お願いやめてよ…」
ヒカルが涙を流して、頼んでも、加賀の動きは止まらない。その間、三谷や筒井も
思い思いにヒカルの肌の感触を楽しんでいた。
 加賀が、ハンドクリームを指先にたっぷり付け、後ろに当てた。そうして、そのまま、
指を一気に沈ませた。
「や―――――っ」
ヒカルが、細い悲鳴を上げた。加賀が指を動かす度、ヒカルの身体がはねた。
「あっ…あっ…」
中を刺激され、ヒカルは甘い声を止めることが出来なかった。
「進藤…気持ちいいのか?」
三谷が耳元で囁いた。ヒカルは、返事をする代わりに身体をビクッと震わせた。

 やがて、指が抜かれた。ヒカルがホッと息を吐くまもなく、もっと熱くて重いモノが、
押しつけられた。
「やめ…―――――――――!!!」
ヒカルの身体が反り返った。その肩を三谷が押さえ付け、そのまま、悲鳴をあげる
ヒカルの唇を塞いだ。太股は、筒井に支えられ、高く持ち上げられている。
「う―――うぅ」
「いいぜ…進藤…すげえ…気持ちいい…」
加賀が、腰を前後に揺らした。
 ヒカルは叫ぶことも、暴れることも出来ず、ただ、痛みを甘受し、加賀の好きなように
身体を揺さぶられ続けることしかなかった。
 ヒカルは、自分の身体がじわじわと変化していくのを感じた。痛みが徐々に、しびれるような
甘い感覚に変わっていく。
「あ…はぁ…ああ――――」
 ヒカルの緊張が解けたとき、身体の奥に熱いものが注がれるのを感じた。


(90)
 終わったはずなのに、加賀はヒカルを離さなかった。加賀がヒカルの中に収まったまま、
再び腰を揺らした。一旦、はじけたヒカルのモノがまた勃ち上がり始めた。
「はぁ…ああん…やだ…」
ヒカルの艶っぽい声に、三谷が上擦った声を上げた。
「早く代われよ…もう…オレ…」
筒井もヒカルの身体を弄びながら、熱っぽい目で、ヒカルと加賀の行為を見ている。
 加賀はそれを無視して、殊更、ゆっくりとヒカルを味わうと、満足気にヒカルから離れた。
加賀がヒカルから出た後、慌てて三谷が侵入してきた。ヒカルの身体は、それを簡単に
受け入れた。
「あ…」
ヒカルの頭の中は、もう、快感を追うことしか出来なくなっていた。



 こういった経緯から、ヒカルは今ひどく傷つき、ショックを受けていた。初めての
相手はアキラと決めていたのに……。
「でも、ヒカル。気持ちよかったんでしょう?」
ヒカルは、佐為を睨み付けた。気持ちよかったからよけいに腹が立つのだ。最初は、かなり
痛かったが…途中から……。
「で…でも、オレは犯られたんだぞ!加賀だけじゃなく、三谷や筒井さん…それから…」
後は、とてもじゃないけど、口には出せない。
「ねえ…ヒカル……物は考えようですよ。だって、色々と経験を積んだ方が、
 塔矢を喜ばせて上げられますよ?」
その言葉に、ヒカルの表情が、急に変わった。
「その方が塔矢も喜ぶかな?」
瞳が、キラキラと輝いている。
「そりゃあ、自分だけが気持ちいいより、相手も気持ちいい方がいいでしょう。」
佐為がにっこりと笑った。
「そっか――――囲碁って奥が深いな。」
ヒカルはしみじみと思った。そして、これからは、どんどん強い相手と対局して、
経験を積もうと思った。

<終>


(91)
 今日はアキラにとって、記念すべき一日になるはずだ。なぜなら、プロになったヒカルと
初めて対局するのだから―――――
 そう言えば、これは幾つ目の記念日だったか…。アキラにとって、ヒカルとの出来事は
すべて記念日だった。
 初めて会った日、大負けした日、囲碁大会で会った日、それから…囲碁大会の三将戦は、
記念日に入れてもいいのだろうか?ああ、ネットカフェで会った時の進藤は可愛かった。
頬をつつきたくなるくらいキュートだった。つい、意地悪を言ったが本気じゃなかったんだ。
若獅子戦…あの時も、意地を張ったりしないで、最初から素直に見学すれば良かった…。
初対局になるはずだったあの日、お父さんが倒れなければ…!と、一瞬でも思ってしまった
親不孝なボクを許してください。等々……。
 こうして考えてみると、けっこう、二人は会えそうで会えないすれ違いが多い。運命は
残酷だと思った。大昔のドラマにこういう話がなかったっけ?
 極めつけは、ヒカルの『もう、打たない』宣言だ。手合いに出てこないヒカルに焦れて、
学校まで押し掛けてしまった。久々に見たヒカルにいつもの明るさはなく、表情に憂いを
湛えていた。初めて見たあんなヒカルを…。やせた頬や、伏せた大きな瞳に陰を落とす
長い睫毛……。元気のないヒカルに、元気に反応してしまった自分は、結構な恥知らずだ。
 でも、もういい。落ち込む心を隠しつつ、碁を打ち続けた自分の元に、ヒカルは
帰って来たのだから――――本因坊リーグ戦が終わった後、ヒカルが会いに来てくれた。
誰に、どんな誉め言葉をもらうよりも、嬉しかった。天野さんがいなかったら、その場で
押し倒していたかも……。だって、はにかむ進藤がすごく可愛かったから…。



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