ゲーム・マスター 9 - 10
(9)
「ルールは簡単。誰のカンチョーが一番塔矢をなかせることができるかだ」
田中は手についたチョークをきれいにはらうと、またアキラのものとへ戻った。そしてう
つぶせにさせるよう指示する。
「いいか? オレが見本やるから見てろよ」
田中はそう言うとアキラの尻へカンチョーした。
「アアンッ! …痛い、こんなのやだぁ」
田中の指を直に感じたアキラは切なげに、だが少し気持ちよさそうに甘い声でないた。
「この声がでかいほど勝ち。それにおまえらもやってみたかっただろ、塔矢にカンチョー
をさ」
アキラの形のよい尻をぺちっと叩いて田中はクラスメイトの顔を見た。
普段真面目で近寄りがたいアキラが、今は尻を丸出しにしてカンチョーされてよがってい
る。そのギャップとアキラの体への興味から、皆やる気満々の明るい表情になった。
再び活気に満ち溢れだした教室の雰囲気に、田中もやる気をだした。
「よし! そうと決まれば準備に取りかかろうぜ」
(10)
机を教室の真ん中へ持ってこさせると、田中はアキラをその上にうつぶせに乗せた。
「キミ達は今自分が何をしているのかわかっているのか? こんな馬鹿な真似はやめろ」
これから本当にそれが始まるのかと思うと恐怖で、アキラは何とか諭そうとした。
「うるさいな〜。だから言ってんだろ、オレらが楽しければいいって。っていうかそんな
偉そうなこと言って、ただカンチョーされんのが嫌なだけなんだろ」
田中はそう言うと教卓の引き出しからガムテープを持ってこさせた。
「な…何をする気だ?」
怯えた表情をするアキラに田中は語り始めた。
「オレ蝶々好きなんだ。アゲハチョウとかさ、羽がキレイじゃん。で、捕まえたら虫かご
にしまうんだ。でもさ、それでも逃げようとするんだ。当たり前といえば当たり前だけど、
こんなに好きなのにそんな態度とられるとムカツクっていうか、絶対逃がさないって気分
になってさ。針で逃げないようにとめておかないと気がすまないんだ」
ガムテープを楽しそうに破りとった田中は不気味に笑った。
恐怖に耐え切れなくなったアキラは、なりふり構わず逃げようと試みた。だがすぐに取り
押さえられ、机の上に戻される。
「もう逃げらんねーよ」
田中は笑うとアキラの手足を机の脚にガムテープで固定した。
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