少年王の愉しみ 9 - 10


(9)
数日後である。
いつものように、イゴレッドは早刷りの原稿を手に、少年王の城を訪ねた。
「へーえ、今回の扉は中々イイ出来じゃないか?」
「だよな。カッコイイよな、コレ。」
「うん。ライティングがイイね。」
どっかで見たような構図だけど…まあ、いいか。
ボクとレッドのツーショットだしね。心持ち、彼がボクを見上げているふうなのが、またいい。
そんな風に少年王が悦に言っていると、レッドが彼をせかすように言った。
「それよりもさ、おまえ、自分の出番が無いところは撮影も見てないんだろ?」
何か面白いものを見せびらかしてしょうがない、そんな言い方だった。
「うん。……どうかしたの、レッド?」
「いや、見てみればわかるって…」
少年王が頁をめくるのを、レッドはにやにや笑いながら見ていた。
そして、予想通り、その頁で少年王の手が止まった。
彼の身体が、一瞬、硬直したかに見えた
もしかして、これを冗談ととらえてからかうのはまずかったのかもしれない。
何と言っても彼は少年王の一番の側近なのだから…。
少年王の身体がふるふると震えている。
「おい、アキラ…」
と、レッドが心配そうに彼の肩に手をかけると、
「な、な、なんなんだー!この顔はー!!!」
ついに大声をあげて少年王は笑い出した。
つられて、レッドも笑い出した。いや、その前からずっと笑いたいのをこらえていたのだ。
二人の笑い声は城内に大きく響いた。
「ど、どうしちゃったんだ…オガタンは…」
「な、な、コエーだろ?」
「うん、コ、コワイ…」


(10)
「王よ、バカ笑いもいい加減にして頂きたいですな…」
彼らの笑いの原因も知らずに大仰な言い方で部屋に入ってきたオガタンは、もはや笑い転げる
少年たちの餌食でしかなかった。
「ね、ね、コレ、見た?今週の掲載分。」
笑いを抑えきれずに腹を抱えながら、レッドがオガタンに問題の頁を突きつけた。
そのカットを目にしたオガタンの身体が硬直した。勿論、爆笑を堪えるためでない事は言うまでもない。
その緊迫した様子を、少年たちは必死に笑いをこらえながら見守っていた。
そうして、やっと動けるようになったオガタンは、ぐわしっと原稿を憎憎しげに掴んだ。
「ダメだよ…オガタン、そんなくしゃくしゃにしちゃ…」
笑いながら原稿を取り戻そうとする少年王の手を、オガタンの手がパシッと払った。
いつもなら家臣にそんな事をされれば激昂するのが少年王の常であったが、いかんせん、今は
何よりも笑いが勝つのだ。
「ねえねえ、どーしてオガタンはそんなに桑原さんのことがキライなの?」
ケラケラ笑いながら少年王はオガタンに尋ねた。
「ちょっと嫌い方がフツーじゃないよね、」
とレッドも笑いながら言った。
「……あの…ジジイ…」
どこまでも祟りやがる…しかもこの二人ときたら……
だが二人はそんなオガタンの怒りに気付いているのかいないのか、笑いながらもこんな事を言ってきた。
「それともさあ、もしかしてそこまで嫌うってことは、はあの噂はホントなの?」
「噂って、何のこと?」
「緒方さんは桑原本因坊の愛人だって…」



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル