交際 9 - 10


(9)
 アキラは、無言で先を促す。社はふーっと溜息を吐いた。
「初対面も同然のヤツに、チューされてショック受けとるんや…」
「な…!」
何を言った?ヒカルにキス?
 コレ以上ないくらい眦の切れ上がったアキラをちゃかすように、含み笑いで社は続けた。
「堪忍!オレ、進藤にアンタがおるなんて知らんかってん。」
「アイツがあんまり可愛いから、ついクラクラきてしもて…」
悪びれないその言いぐさに余計に腹が立つ。アキラは社を睨み付けた。
「けど、アイツ、ホンマに可愛いわ…今時、チューされて泣くヤツ女でもおらんで…」
アキラの視線に気付いているのかいないのか、感慨深く社は言う。ほんのりと頬が染まって
いるように見えるのは、自分の勘ぐり過ぎなのか?
 社の言うとおり、ヒカルは純情なのだ。そのことは自分が一番よく知っている。
だから…大事にしたいのに……。
「オレ、あっちの趣味ないけど…進藤やったら…本気になりそうや………」
今までのふざけた態度とは違う。告白めいたその言葉に、アキラの不快指数は更に跳ね上がる。
よくまあ、自分の前でしゃあしゃあと言えるものだ。ムカつくのを通り越して、あきれた。
 「それより、どうしてキミがここにいるんだ?」
限りなく冷たい声になった。ヒカルのことを社の口から、語られたくない。
「ああ、そうそう。オレ、トイレ探しとってん。教えてくれへんか?」
社は、アキラの冷たい態度をまったく気にかけないで、訊ねた。本当かウソかはわからない。
どこまでもふざけたヤツだ。
 アキラは、無言で社をトイレまで連れていった。


(10)
 社は、ヒカルとアキラの関係を知って、少しばかりへこんだ。
『なぁんや…お手つきか…』
アキラのあの一言で、すぐに二人の関係に気付いてしまった自分の勘の良さが恨めしかった。
純情そうなヒカルが既に経験済みだということもショックだが、その相手の家で三日間も
過ごさなければいけないのかと思うと溜息が出る。
「ま、しゃあないか。縁がなかってんな…」
嘯いてみても、それが強がりであることはわかりすぎるぐらいわかっている。本当は、
ヒカルの大きな瞳や初な仕草にノックアウトだ。
通された居間で荷物をほどきながら、考えることはヒカルのことばかりだ。
「ホンマに可愛かったな…」
掌で簡単につぶせそうなほど、か細い肩をしていた。自分の手の中で震えるヒカルは、
まるで小鳥のようだった。
社は軽く頭を振った。既に決まった相手がいる者を好きになってもしょうがない。
だけど、気になる。社をおいたまま帰ってこない二人のことが…。いや、ヒカルのことが
気になって仕方がない。社は立ち上がって、障子を開けた。廊下に出ようとして、ふと思った。
「……Hでもしとったら、どないしょうか…」
かまへん。邪魔したる。
 勢い良く部屋を飛び出す。暗い廊下をそのまま進んだ。



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