敗着─交錯─ 9 - 11
(9)
「これ、エサやってもいい?」
「ああ…そこにある」
平日の昼下がり。
昼まで寝て起きて、腹に何か入れようと思っていたところに呼び鈴が鳴った。
学校は午前中で終わりだという進藤が立っていた。
「オレ昼は買ってきてるから、気にしなくていいよ」
ファーストフードの油の臭いが充満する。
「お前な、遠慮もなく人の家で…」
「じゃあ帰ろうか?」
そんな気など無いくせに、テレビから目を離さずに答える。
「…勝手にしろ」
言い捨てて、パソコンを立ち上げた。
「―――?」
棋譜の整理をしていると、部屋が静かになっているのに気がついた。
「どうした、テレビはもういいのか?」
「だって、面白いのやってねーもん」
ハンバーガーやジュースをあらかた食べ終わった進藤が、手持ち無沙汰そうにしていた。
「なら、棋譜でも見るか?」
からかって訊く。
「センセエッ」
ふくれっ面をすると俯き、
「…いいよオレ、帰るから」
と言って拗ねた。
ため息をつき、何でオレがこんな子供の暇つぶしに付き合わなければならないんだと苦笑した。
「…冗談だ。こっちへ来い…」
椅子に座ったまま前に立った進藤を引き寄せ、半ば挨拶のようになったキスをした。
(10)
「冷てっ…」
わざと温度の低いシャワーを浴びせ、睨まれる。
「貸せよそれ、オレもっ」
「こら危ないぞ…」
エアコンの温度が高かったのか、二人とも汗だくになりシャワーを浴びることになった。
行為の後にはシャワーを浴びるのが習慣なのだが、今日は進藤がちょろちょろとついて来た。
そして案の定、じっとはしていなかった。
「‥‥何?」
「‥‥何が?」
「なんか、マジな目してる」
ボディーソープを泡立てながら訊いてみる。
「‥‥お前、ソープって知ってるか?」
「?」
「簡単に言うと泡風呂だ。泡踊りだ」
「アワ踊り?」
「女体のな」
進藤の顔がカッと赤くなった。
「しら、しらねーよ、そんなのっ、…オレ、未成年だし…」
やはり知っていたのか、頭の中で色々と想像しているようだった。
(そっちの方のお勉強には余念がないな…)
俯いている進藤の股間が、首をもたげ始めていた。
「お前、…」
(あれだけで勃つのか――?ったく‥‥)
体を前のめりにして浴室を出ていこうとした進藤を掴まえ、泡立てた泡を体の脇に滑らせた。
「ひゃっ…」
驚いて飛び退こうとしたのを捕らえて体に泡を塗り込んでいく。
「あの‥‥なんか気持ち悪いんだけど‥‥」
「すぐ好きになる」
自分の体と進藤の体を密着させ、滑りの良くなった手を体中に這わせる。
ヌルヌルと滑る石鹸水が体中に広がっていき、触れ合った箇所がツルツルと磨り合う。
身を任せていた進藤の体が、ビクッと緊張した。
股間のモノは既に屹立していた。
「‥‥よくなってきたか?」
(11)
「うん…」
目を閉じて体重を預けてきた。耳朶を噛み石鹸の付いていないところを舐めていく。
「さっきしたばかりで、もう欲しがるのか‥‥?」
わざと意地の悪い言葉で囁く。
「うん‥‥欲しい‥‥」
顔を羞恥で真っ赤にさせながら、体を這わせている腕を掴み、自分の股間に持っていこうとする。
「駄目だ‥‥自分でしてみせろ‥‥」
耳朶まで赤くなった。
「やり方を知らないとは言わせないぞ‥‥」
震える手で自分の陰茎を握ると、遠慮がちに扱き始めた。
「ん…う…」
最初はそっと握っていたのが、だんだんと力が篭ってくる。
「‥‥気分出てきたじゃないか‥‥」
そっと息を吹きかけると体を捩る。
「はっ…はっ…」
小さく息を切らせ、一生懸命に扱いている。
(オレがいること分かってるのか?)
と訊きたくなるほど没頭していた。
それじゃこっちも――
身体を抱きとめながら、後ろを指で突ついた。
「あっ」
体をビクリと跳ねさせ、小さく声をあげた。
「だめ緒方せんせい‥‥」
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