トーヤアキラの一日 9


(9)
ふと机の横を見ると、ゴミ箱が一杯になっている事に気付く。今日は丁度、ゴミ回収の
日だが、9時までにゴミ集積場所に出さなくてはいけない。急いでゴミ箱を持って台所に
行き、棚の中にある半透明のビニール袋を取り出して、台所に置いてある生ゴミの入った
袋や空の牛乳パック等を放り込んでいく。最後に部屋のゴミ箱の中身をビニール袋の中に
逆さにして空ける。ゴミの中身は殆どがティッシュペーパーで、馴染みのある臭いが鼻を
衝き、いやでも昨夜の事が思い返される。

ヒカルと関係を持つまでは、自分で慰める事など殆ど無かったアキラであったが、最近では、
ヒカルに会えない夜に、ティッシュの山を築く事が多くなっている。
毎日、布団に入るまでは『今日こそはしない』と心に誓うのだが、布団に入って寝付け
ないでいると、その誓いは脆くも崩れ去ってしまう。
昨夜も『明日は進藤に会えるのだから、絶対にしない』と自分に言い聞かせて布団に入った。
何の物音もしない、暗く静かな部屋の中で目を瞑っていると、この部屋でのヒカルの姿が
自然に思い起こされる。楽しそうに話をしている顔、真剣な眼差しで碁盤を睨んでる顔、
甘える様に潤んだ瞳で見詰める顔・・・・・・・。

瞼の中のキミを抱き寄せて唇を重ねる。キミの柔らかい唇を軽く舐め回した後、勢い良く
口腔内に進入する。キミの舌を絡め取り、次々に唾液を流し込むと『んっ…..』と喉を鳴らし
ながら、与えられた液体を飲み込む。その動きを感じたくて、そっとキミの喉に手を当て
ると、喉仏が軽く上下しているのがわかる。
───あぁ、進藤・・・・キミに会いたい、キミに触れたい
───いやダメだ、これ以上キミの事を考えたらまたしてしまう・・・・・
そんなボクをキミは不思議そうに見詰めて、耳元で囁く『トーヤ、早くぅ』
───ダメだ、進藤、ダメだ・・・・・・
そう思うのに、キミの声に我慢できなくなって、思い切りキミを押し倒す。
───あぁ、これ以上ダメだ・・・・ダメだ・・・・・



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