光明 9


(9)
長い沈黙を最初に破ったのはヒカルだった。
「何言ってんだ お前。」
「えっ?」
「オレは なってやるぜ碁の神様に! 誰にも手が出せない究極の一手を いつか打ってみせるって
毎日思いながら打ってるぜ。塔矢お前もそうだろ?」と言いながら一瞬ヒカルの心に佐為の姿が浮かんだ。
「オレをプロの世界に引きずり込んだのは お前だぞ。そのお前がオレから、神の一手から逃げるのか!?」
それを聞いたアキラは目を吊り上げてヒカルに向かい激しく怒鳴った。
「逃げる? 誰が いつ逃げると言った? ふざけるなっ!!
ボクは どんなに苦しくても辛くても碁を打っていくと決めたんだ!!」とアキラは言い放ち
肩を上下させて息をした。
ヒカルはアキラの怒りに燃えた顔をじっと見てニヤッと笑った。
「いつものタカビー調に戻ったな。それが お前のキャラだよ。
自分の碁を信じなくて いったい何を信じるんだよ。そのままの お前でいいんだよ。
お前は誰よりも神の一手の高みを自覚しているからこそ不安になったんだろ。」
ヒカルはそう言いながら いつか自分もアキラのように神の一手の重みの前に躓く事が
あるかも知れないと思った。アキラの苦悩する姿に未来の自分が重なった。
アキラの心の葛藤の叫びは他人事には思えなかった。
ヒカルの曇りの無い真っ直ぐな目と、自分に対する嘘偽りのない意見を聞いてアキラはハッと我に返った。
自分の態度や発言がヒカルに対して いかに乱暴だったと思い目を伏せた。
「しかし なんだな。お前でも不安に駆られて身をつまされる事ってあるんだな。
意外な感じがするよ。」とヒカルは口ではそう言ったが以前よりアキラに対し親近感が増した。
アキラの存在は自分のライバルなのは勿論だが、今まで かつて抱いた事の無い
もう一つの感情が湧きあがるのを感じた。
その感情が何なのかヒカルは いまいち理解出来なかった。
しかし なぜか本能的に恐れて それに気付かないフリをした。
アキラは自分の弱い心を卑下しているが、悩みに対して逃げず自分自身に真正面に向かい合い
深く掘り下げて問題の本質に迫ろうとする人間は あまりいない。
人は辛い事・苦しい事から目を背け、楽な方へと目が向く傾向がある。



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