無題 第2部 9
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アキラは芦原の顔を見詰め、それからゆっくりと首を振った。
「わからない。」
そして、目を伏せて、小さい声でこんな風に答えた。
「わからないんだ。ボクは…ボクには…。
それにそんな風に言われても、やっぱり、ボクはどうしたらいいのかわからないんだ。」
正直、ここで恋愛相談とは、と芦原はちょっと驚き、それからこんな感慨に耽った。
―でも、アキラもこんな事で悩むようになったんだなあ。そうだよな、もう中学生だもんな。
うーん、そうか、さっきの超色っぽいアキラは恋する少年のオーラだったのかぁ。
いや、でも「言われて」って事は、誰かに告白されて悩んでるのか?
コイツも生真面目なヤツだからなあ…。
でも、うん、さっきのアキラはオレでもクラクラするくらいだから、本人は気付いてないだけなんじゃ
ないかなぁ…?
そんな事を考えながら、芦原はアキラに聞いた。
「誰かに、言われたのか?好きだ、って?」
「…そういう事、なのかな…?」
―あの人は一体どういうつもりで、ボクにそう言ったんだろう。ボクを好き?ボクに恋してる?
大人の、男の、あの人が、ボクを?しかもボクだって男なのに?そんな筈、あるわけない。
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