少年王アキラ? 9
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「よし、瀬戸際で2票入ったから多分オレは見事敗者復活を遂げたな。――集計
が楽しみだ」
額に滲んだ汗を拭い、オガタンはメガネを取って少年王に微笑みかけた。
「フフ、キミも1票投じてくれたから、1位かもしれん」
ハマグリゴイシの背に乗せるべく、今度は自発的にアキラ王をその腕に抱きあげ
ながら、オガタンは夢見るような表情でうっとりと呟く。
「フフ、アキラくんとレッドとオレによる本選……悪くない」
不幸なことに、オガタンはトーナメントの方法をあまりよく知ってはいなかった。
「あ、反映されたみたいだ。……でも、23時2分になってる。これは無効になる
と思うけど」
丁度ディスプレイがよく見える位置で抱き上げられていたアキラ王は、オガタン
が放り投げたメガネを弄りながら報告する。またしても「ぎゃっ」という醜い声が
聞こえてきたが、もう少年王も周りをきょろきょろ見渡したりはしなかった。
(オガタン…可哀相に…)
「なに! …クソ、オレとしたことが時差を計算に入れてなかった……!」
この宇宙船と2ちゃんねるでは、時間の流れる速さが4イゴイゴほど違う。例えば
宇宙船の中で1日過ごしている間に2ちゃんねる内では4日も過ぎているような状
態であるが、オガタンは焦るあまりにすっかりそのことを忘れていたのだ。
アキラ王は彼の主治医の顔を見てみたかったが、先に精神的ダメージを受けるかも
しれないという防衛本能が働いた。
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