Shangri-La第2章 9
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「一緒に寝てはくれませんか」
「ダメだ」
「どうしてですか」
「どうしても何も……キミは何と言ってここを出ていったか
もう覚えていないのか?」
「―――覚えています」
「ならば答えは出ているだろう。今晩ここに泊めるのは、
キミが先生の息子さんで、先生が奥様と家を空けておいでだからだ。
あぁ、パジャマと下着は寝室に用意してあるから好きに使うといい。
――それじゃ、おやすみ」
一方的に話を切り上げ背を向けた緒方に、アキラは後ろから飛びついた。
「緒方さん…一人に、しないで………」
アキラは精いっぱいの力で緒方に抱きついた。声が少し震えている。
「離しなさい。安易に人を頼るんじゃない。
しかも一度切った人間を頼るなんて、どうかしていると
自分で思わないのか?」
暫くして、全身の力が抜けたかのようにアキラは緒方を解放した。
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